NGC4217銀河で発見された特殊な磁場構造
2020年7月23日 19:13
地球から約6700万光年離れた宇宙空間に浮かぶおおぐま座の渦巻き銀河NGC4217で、これまでに発見されたことのない奇妙な構造が見いだされた。この発見は、スローン・デジタル・スカイサーベイと呼ばれるプロジェクトによるもので、光学望遠鏡と電波望遠鏡による観測データの組み合わせにより、銀河全体を覆う全長2万2500光年にも及ぶ大規模な磁力線構造の存在が確認されている。
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スローン・デジタル・スカイサーベイとは、米国、日本、ドイツの3カ国による共同プロジェクトだ。光学望遠鏡により全天の25%以上の範囲を観測し、銀河やクエーサーの位置及び距離を正確に測定して、詳細な宇宙地図の作成を目指している。
この宇宙にとって、渦巻き銀河の存在は珍しいものではなく、むしろごく一般的なものであるが、NGC4217に見られるような巨大な磁力線構造を伴う銀河はこれまでに発見されていなかった。この銀河は、X字型の磁場構造やスーパーバブルと呼ばれる巨大な空洞構造を伴っている。
スーパーバブルとは、直径数百光年にも及び超新星爆発や恒星風がその発生原因とされている。その内部は超高温のガスで満たされており、そのもっとも外縁部には多くの塵が見られる。恒星風は恒星によってもたらされるガスの流れで太陽風もその一種である。また規模の大きなスーパーバブルは銀河全体を吹き飛ばす威力を持ったものあるという。
このような構造がもたらされた原因は、巨大な恒星の形成プロセスに伴うものではないかと科学者たちは推測しているが、厳密な結論を得るためには、今後さらに多くの詳細なデータ収集が必要との見方も示されている。
銀河では、光学望遠鏡による観測に加えて、電波望遠鏡による観測データを重ね合わせていくと、これまでに知り得なかった様々な発見に遭遇する機会が非常に多いと科学者たちは証言する。従来は、銀河における物質の存在だけを意識した研究がなされてきたが、今回の発見は、今後物質以外の対象として、新たに銀河全体に広がる磁場の存在も意識しながら研究を進めていく必要があることを、科学者たちに認識させるきっかけとなった。
ところで、これまでの銀河研究の中では、磁場生成の原因についてはダイナモ理論が唱えられてきた。これは銀河円盤内に存在するプラズマの回転運動によって、磁場が生成するとの考えだ。しかしNGC4217に見られる磁場が、円盤に沿う形ではなく先に示したようなX型構造となっている原因については、この理論では説明がつかない。
いずれにしても、宇宙にはまだ人類が知ることのない特異な構造を持った天体がたくさん隠されている。そしてその数は科学者の数をはるかに上回ることだろう。宇宙の神が準備した謎の数々は、人類に永遠の探求心を求めているのかもしれない。(記事:cedar3・記事一覧を見る)