思考力3本柱 注目の「ラテラル・シンキング」とは
2020年7月15日 09:41
前回の記事では21世紀に求められる力「クリティカル・シンキング」について触れた。それと併せて、今、しっかりと育てていきたいもう1つの思考法がある。それが「ラテラル・シンキング(水平思考)」だ。これは一体どんな思考法なのか。思考力の3つの中核をなす「ロジカル・シンキング」「クリティカル・シンキング」そして「ラテラル・シンキング」、今日はここに注目してみたい。
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■ロジカル・シンキング(垂直思考)
まず前提として「ロジカル・シンキング」について触れるが、これは、物事を効率よく、かつ合理的に考えゴールに導く思考法のことだ。
「これは〇〇になる。何故かと言えば〇〇だ。従って…」と、数学の証明式を当てはめた様な、筋道の通った論理的な考え方をする。論理的思考、または垂直思考と呼ばれている。論理を追求し深めることが得意である思考法ではあるが、新しい発想を生み出すことが難しいという弱点もある。
■ラテラル・シンキング(水平思考)
そして、この対極に位置するのが「ラテラル・シンキング」になる。先述した「ロジカル・シンキング」が縦に順々と手順を踏んで考えていく思考法であるのに対して、「ラテラル・シンキング」ではその順序から外れ、横に広がるかのように別のアイデアを出していく。つまり既存の理論や物事にとらわれることなく、斬新なアイデアを生み出ことが出来るのだ。
「目の前にりんごが2個ある。3人で平等に分けるにはどうしたらよいだろうか。」さて、皆さんはどうやってこの問題を解決するだろうか。1度立ち止まり、考えてから先に進んでほしい。
「それぞれのりんごを3等分にして、2片ずつ分ける。」この類の、合理的ゴールを目指す考え方であれば、それはロジカル・シンキングで答えを導いたことになる。では、次のような回答はどうだろうか。「りんごを加工し1つのアップルパイにして3人で分ける。」或いは、「ジャムにして平等に3等分にする。」
りんごをりんごのまま分けなくてはならないという前提は、ここには無かったはずだ。見えない常識や思い込みで答えを限定してしまえば、そこに新しい発想が生まれることは無いのだ。
■ラテラル・シンキングが問われる世界
ラテラル・シンキングには決まった答えがない。つまり正解は1つではないのだ。様々な角度から物事を見て自由に発想する。そしてそれが新たな解決策を生み出す。企業研修や、入社試験に採用している企業もある。
また、Apple、Microsoft、セブン&アイ、ソニー、トヨタなどの企業でも、前提を疑い、常識を打ち砕き、全く新しい発想でヒット商品を生み出してきた。子供たちの未来には間違いなく、この柔軟な思考力が求められているのだ。
「今の教育システムの大きな問題の1つは、設問に対して正解が1つしかないことだ。(中略)その結果、生徒たちが学校を卒業するころには、「正解」を見つければ問題は解決する、と信じて疑わなくなる。だが不幸にも、現実の世界はそうではない。すべての問題には、たくさんの解決策がある。」(ポール・スローン『ラテラル・シンキング入門 発想を水平に広げる』より)
今の子供たちの未来には、私たちの知っている「今」とは全く違う世界が広がっているであろう。だからこそ、古い常識が子供たちの足かせになってはならないことを、私たちは大人は肝に銘じておかなくてはならない。(記事:板垣祥代・記事一覧を見る)