【接触8割減は不要か? (1)】 AI検証【人口密度高】「人出55%減」で「接触頻度88%減」
2020年7月8日 19:56
COVID-19拡大防止のために実施された「接触8割削減目標」について、スマートフォンのGPS位置情報のビッグデータを用いた検証が行われている。NTTドコモのGPS位置データを基にした「人出」のデータが用いられているものの、このデータと「濃厚接触」の可能性のデータは必ずしも連動しない。モデルベースで感染拡大を予測出来れば、第2波などを事前に察知して警戒態勢をとることが出来ると考えているようだ。
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「位置情報ビッグデータによる人口密度」と、実際の「濃厚接触の可能性」との関係は、一定であるはずはない。「法則性」すら怪しい。たとえ法則性を発見しても、「法則性」を告知したならその法則性は失われるはずである。
一般に、満員電車など「人ごみ」に入った時、COVID-19拡大が知れ渡る前であれば、特段の警戒心は働いていない。その時の濃厚接触の可能性は極めて高くなる。だが現状では、人々の警戒心が張り詰めており、口数も少なくなっているはずだ。この2つの場合の人口密度データを同一の基準として、濃厚接触の可能性の結果を予測しても効果は低いだろう。
■【人口密度高】では「人出55%減」で、「接触頻度88%減」
【人口密度が高い地域】では、「人出が55%減れ」ば、「接触頻度が88%減る」との結果もあるようだ。つまり、逆に人口密度が一定以上高いと、極端に接触頻度は高まるとも言える。例えば、「3密を避けろ」と意識が働いても、満員電車のような「ソーシャルディスタンス」を物理的に採れない密度になってしまっている場合などだ。
これらのデータによって、どれほど「自粛」したらよいのかを探し出そうとしているようだが、管理技術的に考えると、人間の「不安感」はぬぐえるレベルではない。現在、居酒屋は開店してもお客が寄り付かないなど、経済活動はどちらにしても致命的打撃を受けてしまう。この状況では、外出自粛要請で「人出は5割減で良いか、8割減が必要か?」などは意味をなさないのだ。
インバウンドを基にしたグローバル経済によって、国内の生活レベルを保つことは難しいと判断すべきであろう。
「8割おじさん」こと、北海道大学大学院医学研究院の西浦博教授も参加して、「人口密度と接触頻度」の関係などをビッグデータから導き出す研究が始まっているようだ。基本的に「すれ違うだけ」では「濃厚接触にならない」とすれば、スマホのGPSデータから濃厚接触の可能性を導き出すのは容易ではあるまい。
位置情報があって、陽性者と同じ位置に1時間いたとしても濃厚接触していると断定はできない。例えば、30階建てのホテルの各階同列1室に1人がこもっていたとすると、同じ位置に30人がいたことになる可能性が出るが、実際は完全に隔離していることになる。これはオフィスビルでも起きることだ。3次元を考慮しないと、都市部ではデータが使い物にならない。住宅街のマンション、団地でも起こるし、2階建ての戸建てでも起こることだ。
地図情報と合わせるとして、厚生労働省の基準では「マスクをしていたら濃厚接触にならない」と規定していたことがあった。AIは大量のデータがあれば傾向を導き出せるが、大量データであっても「人間の意識が変化」している場合、実際に「感染したデータとその環境」を加味しないと、これからの「精緻な予測」は難しい。統計学の本当の難しさは、取れたデータ元の状況を理解できるかである。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)