小学生の英語学習に「文法」は不要なのか 日本と海外、英語指導の違いとは
2020年6月17日 17:04
2020年6月。緊急事態宣言の解除後、長期間の休校をせざるを得なかった首都圏の教育現場も動き出し、小学校では新しい指導要領での学習がスタートしている。この詳細は文部科学省ホームページの「教育」から中身を除くことが出来るが、英語指導を行っている立場からひとつ気になる点がある。小学校外国語科では文法指導は行わないということだ。
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文法指導に関しては難解なイメージを持つ人もいるように思うが、文法ルールを学ぶと言うことは、言語習得の近道をするということだ。そして実際に、英語圏では小学生低学年から文法教育は行われている。
■英語圏での英語授業
では海外では一体どのように英語指導を行っているのか、いくつかの例を挙げて中身を見てみよう。
例えばアメリカの小学校における英語指導の柱は、「読書」にある。毎日、日本とは比べものにならないほどの量の本を読み、同時に日本語のひらがなにあたる「フォニックス」の読み書きを徹底して行う。
インターナショナルスクールでも同様の指導が行われており、アメリカ式、ケンブリッジ式、カナダ式など、どのカリュキュラムでの英語指導にも「フォニックス」が徹底して組み込まれている。英単語のつづりと発音の関係を繰り返し練習し、徹底的に頭に叩き込ませるのだ。
このトレーニングにより、初めて見た単語であっても正しく「読む」ことが容易になる。そして「文法学習」もまた、低学年にかかわらず既に指導が行われているのだ。
■文法トレーニングを何度も繰り返し理解していく
手元にあるアメリカ式のテキストを参考に、少しだけ実例を見てみよう。
例えば小学1・2年生レベルでも、簡単な文の構成要素を学習し、主語(S)+動詞(V)(naming part+action part+where/when)の簡単な文を何度も書く練習をする。文の始まりを大文字にするルール(capitalize)や文の終わりのピリオド(full stop)、英語での単数複数の概念(singular/plural)等は授業中に先生が繰り返し何度も何度も指導している項目だ。
他にも、普通名詞(common noun)や固有名詞(proper noun)を身の回りから探し書き出し提出する課題や、マインドマップを活用し物語を作るなど、子供たちが楽しみながら言葉を学んでいく過程がそこにはあった。
低学年への学習指導は世界共通で「楽しみながら」学ぶ工夫がされているように思う。そしてもしそうであれば、低学年から文法を学ぶことは、「文法=難しい」という日本人の概念を見事崩してくれるのではないだろうか。
■知識を積み重ねるスパイラル学習
もうひとつ、ケンブリッジ式で学ぶ子供たちの学習内容を見ていて驚いたことがある。3学年離れた兄弟が、複数の教科で同じ単元を学んでいたのである。
例えば2年生・5年生の理科で言えば5単元中4単元が同じだったのである。一体どういうことか。これは同じ単元を徐々に難易度を上げながら繰り返し学習していく「スパイラル学習法」が取り入れられているということである。
何もケンブリッジ式に限られたわけではなく、アメリカの問題集でも同じ様にこの方式が取り入れられていた。また日本でも難関校への圧倒的な合格者数を誇る学習塾SAPIXや、子供向け英会話教室の老舗ECCジュニアでもまた、このスパイラル学習(らせん状カリュキュラム)を導入している。
新しい指導要領が施行されているが、それでも日本の文法学習は中学生からだ。子供たちの柔軟性と理解力をもっと評価し、信頼し、大人が限界を決めずに子供たちの学ぶ力と可能性を信じてみてはどうだろうか。
小中学生の英語指導にあたってきた経験からも、英語の文法習得は、早い段階からゆっくり時間をかけることにメリットがあるように思う。分厚い文法書を片手に指導するのではなく、言葉のグループ分けやお話作りなど遊びを通して、子供たちと一緒に大人たちもまた、楽しく英語の文法ルールに触れてみることをお勧めしたい。(記事:板垣祥代・記事一覧を見る)