トヨタ国内生産台数300万台確保は難しい (1) 防疫の基本的知見
2020年5月7日 16:09
トヨタは日本国内の「物造り資産」を絶やさないために、国内生産300万台の水準を保ってきた。しかし、新興国の安い人件費がゆえに、生産工場を新興国に移さざるを得ない事情があるのは事実だ。
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かつては中国が「世界の工場」と言われたほど、安い人件費を求めて世界のメーカーの進出が続いてきた。それは同時に日本の失業者を増やす動きであり、かつてアメリカが苦しんできた「産業の空洞化」と言われてきた現象だ。日本国内の雇用がなくなるのだ。
これは自動車産業に限られたことではなく、家電はこの動きの中で、日本のメーカーが淘汰されてしまった。これから自動車も国内生産を諦めていくと、「物造り日本」の資産が絶たれてしまう。その中でコマツとトヨタは、日本企業の社会的責任として、国内生産を一定程度維持する施策を続けているのだ。
これにはかなりの努力が必要となっていたが、今般の新型コロナウイルス感染拡大により、中国にサプライチェーンの主力を置く国内工場では部品調達が難しくなり、工場の操業が止まった。続いて、「販売台数の激減」で在庫が増え、生産を止めざるを得ない状況となっている。
中国の部品工場などが操業停止したことで、直接「感染者の拡大」が社員にも及び、工場がクラスターとなってしまう危険が生じているからだ。日本でも、工場がクラスターとなってしまう危険を伴っている。
■企業経営にも必要な防疫の基本的知見(基礎知識)
「接触8割減」の自粛要請は、「なぜ?」行われているのか。「なぜを5回繰り返す」と「本当の原因に行き着く」として、トヨタは半世紀以上前から「カイゼン運動」の要としてきた。本当の理由を突き止め対策を打つには、「なぜ?」を5回繰り返すと、ほとんどの場合「真の原因」にたどり着けるからだ。
「接触8割減」は、「隔離」するためだ。感染拡大させないために、国民全体で自分を「隔離」するのだ。だがそうすると、「経済的に壊滅的損害」が出る。当たり前だが、それを承知で隔離を行っているのだ。これでは遠からず全滅してしまう。経済的に立ち行かなくなるのだ。
だから、いつまでも「隔離」は出来ないのだ。すると、「陽性者だけ隔離すれば良いではないか」と思いつくはずだ。すなわち、感染してしまった人を引き離し、感染していない陰性者は出来るだけ経済活動を続けることで全滅は防げる。それには出来るだけ検査して陽性者を見つけ出し、隔離することを急がねばならない。その是非はともかくとして、PCR検査数が多い韓国やドイツが、さらに相当数の検査を増やそうとしているのは、出口戦略を考えているからだ。
症状のないキャリアは「ホテルなどの施設」へ隔離し、症状が出て治療が必要な患者は入院する。軽症な人は重症にならないように「アビガン」などの治療薬が使えるのであれば早期に投与。それでも重症になってしまった患者の救命には、医療資源を投入する。こうして死亡者を少なくしつつ、経済活動への影響を最小にするのが利口な考えだ。これを、企業経営者は念頭に置いたほうが良いだろう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)