【自動車産業は系列を破壊すべきか (3)】ジャストインタイムがコストを決める
2020年5月6日 19:31
さて、コストがすべてではあるのだが、経営の観点からは「資金効率」を考えなければならない。ROE(自己資本利益率)で見ると、グローバル発注を最優先とすべきだ。最近は、借金をしてでも自社株買いをする経営者が多く存在する。それは株主の要求であるからだ。その時、有利子負債が増加し、金利や返済資金の増大を招いても、短期の利益率が良ければ問題とならないからだ。
【前回は】【自動車産業は系列を破壊すべきか (2)】コストが勝負を決める
だから、ともかく利益となると、資金量よりも短期的にはグローバル発注だ。しかし、ホンダは新型フィットの電動駐車ブレーキで躓いた。メーカーを変更して解決したが、問題のあったメーカーに対して品質保証をホンダ自身で責任を持ってはいないのであろう。
サプライヤーに任せてしまい、ホンダ自身の品質管理技術によりサプライヤーの工場を査定していたとは思われない。行っていたとしても、独立の部品メーカーを管理するのは困難だ。「技術は買って来ればよい」とするのであれば、「品質も買ってくる」やり方となる。
■ジャストインタイムがコストを決める
それに対して、品質の問題においては、自社工場であれば事前に問題点を洗い出すこともしなければならない。その上でのジャストインタイムだ。これは「ムダを省く」ことを第一とする考え方で、その中に「不良のムダ」「在庫のムダ」が含まれている。また、「ムラ」を排除できるメリットもある。
工程間在庫、つまり仕掛在庫を無くすには「行程結合」が必要だ。そこでは「系列」の親会社に準じた生産・納品体制が効果を発揮する。「必要な時・必要なだけ・必要な品質」で系列会社が納品してくれることで、倉庫などの必要性がなくなり、大きな資金の節約につながる。すると、有利子負債が減ることとなる。
それに対して、グローバル発注では、ロット納品される部品の受け入れ態勢(倉庫や人材など)にどれだけのコストが掛かっているのかは、決算にすぐには表れない。そのため、「グローバル発注が安い」と判断を誤る時が出る。
この「在庫のムダ」を発見し、無くすのは容易ではない。現在も、新型コロナウイルスで工場停止に追い込まれた原因を精査しておくことは、非常に重要だ。グローバル発注で、どこの工場でもよいから安いと思われる部品を世界から購入していると、今回のように中国1国に偏っていた場合などは工場停止が早かったはずだ。これには生産拠点ごとの周辺でサプライヤーチェーンが出来ていると、ジャストインタイムも完成しやすく、トータルではコストが安くなる可能性が高い。
世界の生産拠点ごとに「系列工場」も生産拠点を持っている系列独特の体制は、ジャストインタイムを構築しやすくなっているはずだ。こうした生産体制を検証すると、総資金量も見当がつくのだ。資金効率を表面的な財務係数に頼っていると、間違える。そのため、製造企業を評価するには、現場である「工場見学」が大変重要だ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)