【自動車産業は系列を破壊すべきか (2)】コストが勝負を決める
2020年5月6日 08:23
■トヨタに残る資本での結びつき重視
トヨタは現在、スバル、マツダ、スズキと緩やかな協業体制を築きつつある。以前には、ダイハツなどを資本の配下に置いてグループ企業化してきた。その後、CASEなどの動向に合わせて、技術開発費を分担できる体制を整えつつある。
【前回は】【自動車産業は系列を破壊すべきか (1)】トヨタの危機がやってくる? 系列とはなにか
サプライヤーに任せて、「最新最高性能のものを世界から買ってくる」とはしていないことになる。資本関係や業務提携関係などの企業に、分担して技術開発する体制だ。その中で、独自の技術が商品価値につながる可能性もあり、逆に開発費倒れに終わる危険性もある。
また開発に成功しても、開発費の回収が遅れる心配もある。すべては、生産体制との関連を含めて決定しているのであろう。
トヨタの創業期は、技術を持ったサプライヤーを集め、資本をそれぞれで用意して、トヨタを「親分」としてグループ企業として発展してきた経緯がある。今では考えられない仕組みで、下請け企業がそれぞれ「親分」に投資してきたのだ。
親企業の商売に連れて資金を投下して、技術開発も引き受けてきたのだ。気がついて見れば現在の緩やかな企業連合は、それぞれ得意な部分で技術開発して、それをみんなで使うと言うメカニズムであり、創業期の「共同出資」のような形態に近い。
例えば、パナソニックとの関係で見ると、トヨタとパナソニックは共同でバッテリー開発をしているという形態だ。日産も同じような形態をしている。親分に率いられた子分ではなく、共同開発者である。よりグローバル発注に近付いたと言えるのかもしれない。
■コストが勝負を決める
こうした種々の協力関係について、結果を見るとしたら基準は簡単だ。「コスト」である。もちろん特別な技術であれば、相対的に安いと見ることも出来よう。
ただし、それは一部についてのみである。村田製作所は「慣性センサー」の分野で画期的製品を生み出している、と言っても珍しい製品ではない。飛行機に使われている慣性誘導装置のコストを劇的に下げたのである。製造技術・生産技術の改良によってだ。
しかし、このコストダウンで自動運転車は現実のものとなろうとしている。サプライヤーとしての価値は、「どこにも作れない製品」ではなく、「どこよりも安く作れる製品」となる。
さらに技術開発が激しい現在、開発費の回収期間を短くすることも重要だ。すると、1社に納品する量よりも、圧倒的に生産量の大きな「グローバル販売」のほうが有利だ。それで、最近はトヨタの系列においても、「トヨタ以外に販売する」よう系列サプライヤーに指示が出ている。資金回収の期間を縮めるためだ。
こうしてまた、「系列とは何か?」が問われる時代がやってきた。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)