競争激化ドラッグストア業界でキリン堂が好調な理由

2020年4月30日 07:50

 関西を拠点にドラッグストアチェーン:キリン堂を展開するキリン堂ホールディングス(以下、キリン堂)が、競争激化のドラッグストア業界にあって着実な歩みを継続している。前2020年2月期に至る5期間の平均営業増益率は29.32%。この間25円配が40円配に増加。

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 今2月期も「コロナウイルス禍を読み通せず、その影響は含んでいない」としながらも「18.7%の営業増益、2円増配42円配」計画で立ち上がった。と同時に23年2月期に至る中計を発表「売上高1485億円(前期比11.4%増)、営業利益47億8000万円(同70.9%増)」目標を掲げた。

 キリン堂の堅調さの背景はどんな点に求められるか。

 一つはドミナント効果。前期も新店8+調剤薬局4を新設(総数369)しているが、全て関西圏。

 一つは対応力。国内のネット通販の取り組みを本格化した契機は2011年3月の東日本大震災だった。東北地方に店舗はない。だが大阪地盤の同社は、阪神淡路大震災の教訓からライフラインが寸断された時の「水」の重要性を承知していた。

 当時販売チャネルとしてキリン堂の自社サイト「キリン堂通販 SHOP」と楽天市場店の運営を行っていたが、水や生活用品を求める注文が多く寄せられた。結果、同社のサイトの存在に対する認識も高まり、その後Yahoo!やAmazonにもチャネルを拡充している。

 一つは先行性。キリン堂は中国との間で14年3月以降、越境ECを展開している。IR担当者は経緯を「13年10月に後に持ち分法適用会社となったBEAUNET CORPRATION LIMITED(当時、子会社)を介しアリババから『天猫国際』への出店の誘いを受けた。が、当時はインバウンドの波も起こっておらず、メーカーからの商品調達が難しったこともあり、正直なところ出店に至るまでには紆余曲折がありました」と振り返る。

 制度化粧品などを除き、店舗(300余店)とネット通販での取扱商品は基本的に同じ。前期末の総売上高に占める国内ネット通販比率は1%余に過ぎない。が、「前中計(第2次)で、国内通販の最終的な目的はオムニチャネルの役割を担う点と掲げられた」(IR担当者)とする。

 一時、中国越境ECは中国側による「税制変更・保税区活用制限」で環境の厳しさが指摘された。だが同社では厳しさを重々踏まえた上で「成長市場という認識に変わりはなく、今後とも巨大マーケットに販路・品揃・オペレーションコスト削減を進め臨んでいく」とし、こんな方針を打ち出している。

 『100%出資子会社:忠幸麒麟堂(常州)商貿有限公司の保有株式全てをBEAUNET CORPORATION LIMITEDに譲渡することで中国事業を統合する』

 狙いは「統合により“唯品会(VIP)”がEコマースで日本製品の販売を拡充させるに際し、より効率的な商品調達・供給が可能となり中国市場における事業基盤の拡大が見込める。経営環境に対応し拡大を前提とした方針転換」とする。

 伸長する企業にはやはり、それなりの理由がある。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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