原油価格がマイナス!? 未曾有の事態を生んだ先物取引とは?
2020年4月25日 08:50
原油価格の下落が止まらず、ついに史上初のマイナス価格に突入したが、物品の取引価格がマイナスになることがあり得るのだろうか?例えば、原油価格がマイナス20ドルであれば、原油1バレルを渡した上で、20ドルのお金も払うという未曽有の事態になったということである。
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実際にマイナスになったのは米国WTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)の原油先物の価格だが、ここで注意したいのは、「マイナスになったのは先物価格」であることだ。
先物取引は将来の売買について、あらかじめ決められた価格で取引を行うという特殊な取引ではあるが、現物取引ではなく先物取引が行われる理由は、価格の安定化にある。
例えば、あなたが定食屋の店主だったとしよう。定食を安定的な価格で提供するためには、原材料の値段が安定していなければならない。そこで、来月の30日に買うお米を、仮に1kg500円として「価格を決めて」あらかじめ購入しておく。
これで定食屋の店主は安定的な価格で定食を提供できるようになるが、お米を売る側の卸売業者はどうだろうか。卸売業者からすれば、お米が豊作となり1kg300円で手に入るならば、200円の利益を得ることができ、不作で1kg700円となれば200円の損失を被るだけである。
ここで原油先物の話に戻してみよう。今回マイナス価格となったのは「5月限(ごがつぎり)」であり、実際に未来日に原油の引き渡しが行われるものだ。
お米と違って、原油に関しては倉庫に積んでおけばよいというものではなく、貯蔵するタンクが必要で、貯蔵するだけでもコストがかかる。しかも、WTIの原油はパイプラインで直接内陸に送られているため、海上の船舶に保管するわけにもいかず、貯蔵するタンクが限られているのである。
4月の時点でコロナウイルスの影響で原油の消費が冷え込み、限られたタンクに原油が貯蔵されていく一方だというのに、5月の引き渡しの際にこの状態が続けば引き取ることすらできない。結果として、お金を払ってでも引き取ってほしいという状況になってしまったのだ。
5月限の価格がマイナスに終わったところで、6月限の価格については4月24日現在、1バレル17ドル付近で取引されている。
この価格帯で維持されているのは、トランプ大統領が段階的な経済活動再開を表明していることから、需要が少しずつ戻るという観測がその理由であるが、万が一その再開が遅れようものなら、再び原油先物の価格がマイナス圏に沈む可能性もあり得よう。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る)