LIFULL介護サイトは、一社員の体験で生まれた

2020年4月23日 12:32

 国内最大級の不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME‘S」を運営するLIFULLが、「LIFULL介護(以下、ライフル介護)」を立ち上げたのは2007年。契機はLIFULLの一社員の介護施設探しの苦労体験だった。

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 社員は介護認定見直しで、祖母の新たな入居施設を早急に探さなくてはならなくなった。だが一口に介護施設といっても、その制度形態や料金等々の在り様は様々。当時は検索するネットや紙媒体もなく、時間ばかりが過ぎていった。この原体験から社員は、社内新規事業提案制度(SWITCH)に事業案を提案。賞を受けたことで事業化された。

 加齢とともに故郷への懐かしさが増すのは、私だけでもあるまい。時折、ライフル介護を活用し群馬県の施設を検索している。家業を辞め、私の年金で生活が可能な施設に目星をつけておくためである。

 いま「ライフル介護」はグループ会社のLIFULL seniorが運営している。業界最大級の老人ホーム検索サイトとなり、前9月期末時点で全国3万8000件以上の情報が掲載されている。増加基調は営業努力と同時に、時代の変遷に求められる。電通の調べではネットの広告媒体費は16年に1兆円を超え、18年にはTVの広告媒体費とほぼ同額という状況となっている。

 また、広報担当者は「まだ十分ではない」とするが「網羅性・情報の質」の緻密さにも最大級に至った要因が求められる。具体的には「医療的な条件での検索」「認知症の有無で検索」「ペットの可否」「海の見える施設」「施設長インタビュー」等の軸からアプローチが可能。

 アナリストは「施設側が掲載に際し支払うのは所定の月額のみ。結果、何人の入居が決まっても一定額というのもポイント」とする。

 順調な本業を背景に、ライフル介護に留まらず今後については様々な方向性が検討されている。「シニア世代への生き甲斐の提供として、エンタメ領域・出会いサービス・健康管理関連ビジネス」等々。17年9月には遺産整理・家具の片づけ業者を選択できる「遺品整理サイト」を立ち上げている。

 当初の登録業者数は約200社だったが、現時点では600社を超えやはり最大級のサイトに育っている。18年11月には介護サービスに限らず、シニアに関するテーマや話題を掘り下げた取材記事コンテンツを掲載するメディア「tayorini(たよりに)」がスタート。すぐには介護サービスの必要はない、30-40代の新たなカスタマー獲得に乗り出している。

 LIFULLとの相乗効果も指摘できる。「(施設の入居に当たっての)不動産売却の査定サービス」。LIFULLの情報管理部門との連携による情報管理・セキュリティの徹底等のシナジー効果。

 検索サイトビジネスも多様化している。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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