旧タイセイの創業者が「長女に社長を譲った」理由

2020年3月19日 06:40

 昨年終盤「1月1日付けでタイセイ(3月、cottaに社名変更)の新社長に、創業者社長:佐藤成一氏の長女:黒須綾希子氏が就任する。佐藤氏は会長職に」と知った時、大塚家具の創業者前社長の大塚勝久氏と、社長を引き継ぎ実父と袂を別った現社長の大塚久美子氏の顔が脳裏をよぎった。

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 cottaが上場を果たしたのは2005年。東証マザーズ/福岡市場のベテラン組。cottaに興味を覚えたのは、そのビジネスモデル。和洋菓子店・パン屋・弁当店などに包装紙や食材を小ロットで(カタログ/ネットを介し)通信販売をする企業として、地道に足場を固めてきた。

 小売業を担当するアナリストに状況を確かめていた。着実な歩みを確認した。それだけになおさら、御年62歳の創業者社長が36歳の長女に社長の座を譲るのかが気になった。

 「創業者から直接聞いたわけではない。だが自分は娘の時流に対する知見を認め、これからは綾希子に任せた方が会社の発展に好都合と考えたということだろう。禅譲と受け止めている」(アナリスト)。

 そもそも前社長の佐藤氏は、義父が営む「鮮度保持材」企業の営業マンだった。全国の菓子店も営業の対象。訪れ歩いているうちに、菓子店に包装紙材のデッドストックがあることに着目した。

 問屋からの購入は「ケース買い」が殆どで、「使いたい枚数を使いたい時に注文すること」は不可能。菓子店にとっては負担/不都合。折から「宅配」という流通インフラが整備され始めたことにも背中を押され、記したビジネスモデルで旧タイセイを設立した。

 06年には浸透し始めたPCを活用したECサイト:cotta(コッタ)を開設、ネット通販をバネに成長段階へ。

 EC関連紙の編集長の知人から、バトンタッチの理由について説明を受けた。知人も基本的にはアナリストの見方に賛同した上で、こんな風に指折り数えた。

★BtoBからBtoCへ。創業者の時代はBtoBビジネスが中心だったが、事業構成に明らかな変化が見受けられ始めた。直近の決算を見るとネット経由のBtoCの売り上げが6割水準になっている。コンビニのスイーツ部門への注力で、中小型の菓子屋の中には廃業というケースも出始めている。BtoBの低下を最小限度に抑えながら、BtoCの勢いのある伸びをどう実現していくかがcottaの大きなカギ。

★BtoC拡充に綾希子社長は積極的な施策を打っている。1万円程度の食材を毎月購入するリピーターの率を高めるため、今年に入り1-2月に3県でTVCMを始めている。バレンタインのタイミングに20-40歳代の独身女性に訴求するためで、現にこの時期にターゲット層の掘り起こしに(前年比約50%増)成功している。費用対効果が合えば、CMの全国展開も視野に入れているとしている。

 イベントごとに菓子作りのキッカケとなる企画を提案、それをフォローする意味でメルマガやSNS(インスタグラムやLINE)への投稿に力を入れている。時代を巧みに生かしている。

★そうする一方で、BtoBの低下に歯止めをかけるため単価1万円強の取引をするための「コッタビジネス」サイトの運営も始めている。

 親から子へのビジネス継承も、結局は数字の動向が「成否」を示す。cottaの「禅譲」とされるトップ交代劇もしばらく「答え」が出るまで、期待しジッと見守りたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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