人工衛星に被害もたらす放射線の嵐 高精度に予測する宇宙天気予報技術
2020年3月5日 17:45
宇宙天気あるいは宇宙天気予報という言葉は、あまり耳慣れない言葉であるが、人工衛星の運用に携わる技術者たちにとっては、地上における天気予報よりも重要度が高い存在である。
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というのも、地上と違い宇宙空間に於いては、いつどこから人工衛星に甚大な被害をもたらす放射線がやってくるかわからないからだ。また、人工衛星は製作費や打ち上げコスト、その後の運用にかかるコストが数十億円から数百億円にも及ぶ高額資産であるだけでなく、それらが担っている任務の重要性は人類にとって計り知れないものがある。
今回AGUジャーナルで紹介された論文によれば、ヴァン・アレン帯に起因する放射線の嵐を2日前に正確に予測可能な数値解析モデルが、米ロスアラモス国立研究所の研究員たちの手で開発されたという。
ヴァン・アレン帯とは、地球の赤道上空に存在する放射線領域で、宇宙から飛来し地球の磁場に捕らえられた陽子と、太陽風によってもたらされた電子が主な構成要素となっており、オーロラの発生にも関係している存在である。
ヴァン・アレン帯で生ずる放射線の嵐の引き金となる張本人は、太陽である。太陽で巨大フレアが発生すると、それが太陽風となって地球にもたらされ、その結果、大量の電子などの粒子が地球に到達する。これが地球上空にあるヴァン・アレン帯で急加速され、もしも人工衛星を直撃すれば、被害をもたらすというメカニズムである。
従来技術では、放射線の嵐を予測するのは前日でなければ不可能であったが、過去の放射線における嵐の発生パターンを学習させた解析モデルの構築により、2日前の予報を可能にした。2日という時間があれば、人工衛星が受ける被害を最小限に食い止めるための時間は従来の2倍になるため、対策が取れる選択肢もそれだけ増えることになる。
気象衛星の全てが一斉に放射線嵐で被災すれば、天気予報も不可能になるし、GPS衛星が機能しなくなれば、カーナビも使い物にならなくなってしまい、私たちの日常生活にも重大な支障をきたす事態となってしまう。その意味では、宇宙天気予報の技術は一般人にとっても必要かつ重要な技術であると言えるのかもしれない。(記事:cedar3・記事一覧を見る)