地球気候モデルの研究 他の惑星での生命探索にも活用
2020年2月22日 08:54
NASAのゴダード宇宙センターでは、数千台のコンピューターを昼夜を問わず駆使して、1秒間に7兆回の計算をし続けている。その目的は、地球の気候現象のシミュレーションを精密に行い、高精度で予測するためである。
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このような繰り返しの計算が必要になる理由は、地球という巨大なモデルを対象としているだけでなく、時間を細かく区切った形で計算を行い、その結果をベースにしてその次の時間増分後の状態を計算するという行為を、無限に近い形で繰り返しているからである。
科学者たちはこの気の遠くなるような計算の繰り返しを継続していく中で、ある種の疑問を抱くようになってきている。その疑問とは、自分たちはこうして地球の気候の予測を精度良く実施するために非常にち密な計算を行っているが、他の惑星の生命探索研究において生命が存在できるための必要条件設定を、あまりにも厳しくしすぎていないかという疑問である。
太陽系外惑星は過去20年間でおよそ4,000個が発見されているが、果たしてこれらの惑星に生命が存在している可能性はどのくらいあるのだろうか?科学者たちはかなりの確率で生命が存在するだろうと考えているが、その惑星を直接観察して、大気の成分や気温、生命誕生に不可欠な液体の海の有無を確かめることはできない。
地球に最も近い太陽系外惑星であっても、そこを無人探査機を使い直接観測するには、現在の航行技術で7万5,000年もたどり着くために時間がかかるのである。
現在の技術では、はるかかなたにある惑星のかすかな光だけを頼りに、様々な想像をめぐらすしかない。しかしながら、この大宇宙には太陽系の惑星モデルの枠から大きく外れた、想像を絶するような形の惑星が存在していることも判明している。太陽系の惑星モデルを前提にした生命探索にとらわれる必要はないのではないかと、科学者たちは考え始めている。
地球型惑星モデルは、あくまでも特別な事例であって、もっと多様な生命誕生が想定できる惑星モデルがあると、科学者たちは考えている。例えば太陽系だけでも、土星の衛星タイタンは液体メタンの海が存在している可能性が高く、生命が誕生しているかもしれない。また海王星の衛星トリトンには、液体窒素の海が存在している可能性もあり、そこで生命が誕生しているかもしれない。
太陽系だけでも地球以外のモデルで生命誕生の可能性がこれだけ示唆されているのだから、太陽系外の惑星の多様性を考えれば、我々の想像を超えるような生命環境モデルを見出せるかもしれない。
その際に、例えば液体メタンの海を想定した気候モデルを作り、気候変動を精度良く予測して、そのような気候の中で生命が誕生し生き続けられるのかどうかを考察していくことで、より詳しい生命誕生の可能性の検討ができるようになるはずである。今後の研究に期待したい。(記事:cedar3・記事一覧を見る)