恐竜含む生物大量絶滅、隕石衝突による環境激変が原因か 証拠発見 筑波大ら
2020年2月20日 07:17
今からおよそ6600万年前の白亜紀の終わりに地球に小惑星が衝突し、恐竜を含む地球上の75%にも及ぶ生命種の絶滅をもたらした。このことは一般人の多くに知れ渡っている事実ではあるが、この程度の被害で生命種の75%が絶滅したとは考えにくく、従来想像もされていなかった重大な事件が起こっていたに違いないと専門家たちの間では考えられている。
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その重大な事件について様々な仮説が唱えられてはいたが、それらを実証する確実な証拠は確認されておらず、どの説も推測の域を脱していないというのが実情であった。
この小惑星衝突事件は、メキシコユカタン半島北部に直径10~15kmの小惑星が今からおよそ6600万年前に衝突し、現在も160kmにも及ぶチクシュルーブ・クレータという衝突痕が残っている、地球の歴史上でもあまり類を見ないほどの大事件である。
当時、衝突地点を中心に半径1500kmの範囲で大火災が起き、800kmも離れたイリノイ州に津波が到達したことが間接的に確かめられている。もし、現在の地球で同じようなことが起きれば、東日本大震災とは比較にならないほど被害は甚大なものとなり、日本に衝突すれば、即座に国が存続の危機に瀕することだろう。
だが、これだけの事実だけでは生命種の75%が絶滅してしまう原因としては説明材料が足りないのである。
この大事件の謎についての研究成果が2月になり、筑波大学・高知大学・京都大学・海洋研究開発機構・日本原子力開発機構・量子科学技術研究開発機構・高輝度科学研究センターの連名で公表された。
この研究では、小惑星が衝突した年代の地層に銀や銅の微粒子が含まれていることを世界で初めて明らかにしている。銀や銅の微粒子の存在は、当時酸性雨が地上に降り注いでいたことを示す証拠であり、この事実が生命種の75%を絶滅させた原因であることを示唆しているという。
銀や銅は強い酸性でないと溶けだすことはない。つまり通常の雨では地上に含有される銀や銅は海洋に流れ出すことはないのだ。強い酸性の雨が地上に降り注ぎ、その結果、銀や銅が海洋に流れ出し、堆積して微粒子として確認されたというのが今回の研究の主張である。
小惑星衝突でごく短期間のうちに大火災と酸性雨に地表が曝され、それが流れ込んだ海洋の環境は一瞬にして激変し、さらに大気中には多数の塵が拡散、太陽光が遮断され、地上では低温化が急激に進んだことだろう。
これらが徐々に進んだのであれば、多くの生命種はそれに適応するための時間があったかもしれないが、当時の地球環境変化は多くの生命種に、環境適応のためのいとますら与えない、急激な変化であったのだろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る)