「いちご商法」の巧みさ
2020年1月30日 07:20
一期一会が社名の由来だという:いちごが好調な収益の推移を背景に、順調な株価の推移を見せている。昨年は初値に対し終値は47%方上昇。IFIS目標平均株価も603と上値余地を示している。
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いちごの2本柱は「再生不動産の売却・賃貸事業」と「REIT運営事業」。後者については、J-REIT:いちごオフィスリート投資法人/いちごホテルリート投資法人に象徴的。前者に関しては昨年12月18日の「再生ビル内覧会」で、その実力のほどを見せつけた。
傘下のいちご投資顧問が手掛けた(リノベーションの実施は乃村工藝社関連のノムラプロダクツ)「いちご乃木坂ビル(賃貸ビル)」の再生事業。いちごオフィスリートが2018年12月に取得したこの物件は、竣工後35年という73坪強に建つ6階建ての築古ビル。
契約更新期を迎えた5階のテナントが退去し始めたのを契機に、(5階部分から)リノベーションを開始した。その5階部分の再生ぶりを内覧という形で示しながら、6階すべての完了後の方向性を示した。ポイントを整理すると、こんな具合。
★乃木希典将軍の邸宅跡地が隣接する、自然(緑)が多く残るエリアの特性を生かし「緑豊かなワークスペース」をコンセプトとする。
★会議室となる部屋はガラスパーティションで3部屋区画に分け、視線・空間の広がりを確保する。
★植栽や自然が一望できる窓際には、フリーアドレスカウンターを設ける。
★トイレの増設。共用部分を合わせ90坪にトイレスペースを設けるが、要は女性専用トイレの増設。3室(従来1室)とする。
★エントランスには、地域性を勘案し、和の文様を前面に押し出した光壁(照明ではなく建物自体が光を放つ、建築照明法のひとつ)を設置する(今年3月完成予定)。
既に(5階部分には)引き合いもある様子で、「年明け早々には成約の段取りが見込まれている」とした。
さて、気になるのはリノベーション後の効果。周辺に再開発の動きは見られず、テナントの入れ替わりも少ないことから現状の賃貸料相場は高くて「坪2万円」止まりとされている。が、いちご投資顧問側は「2万円台後半、3万円の大台を目指していきたい」と風呂敷を広げている。
ただアナリストの間には「再生物件の事例を振り返ると、(売却益/賃料で)成功と評価できる。REITの構成不動産の入れ替えでも、そうした実績が基準価格や配当での好循環につながっている」とする見方が多いのは事実。
ちなみに四季報・新春号は今期の営業利益を会社計画に25億円上乗せ:290億円とし、来期も300億円と独自試算を示している。(記事:千葉明・記事一覧を見る)