三菱地所が仕掛けた「エレベーターを小劇場にする」手だて

2020年1月23日 17:15

 DXは、デジタルトランスフォーメーションの略とか。「進化するデジタル技術を活かし、生活環境や生活レベルをより良いものに変えていく」という概念だという。

【こちらも】三菱地所の次なる一手

 最近の「横文字」世界には齢70歳の身は、なかなかついていけないのが現実。だが「この概念を事業に取り込んでいこうという企業が増えている」と耳にしては、仕事柄からして右から左に聞き流しというわけにもいかない。

 デベロッパーの代表格:三菱地所なども積極的な取り組みをみせている1社だという。「具体的に、例えばどんな取り組みか」を調べてみた。

 三菱地所は昨年11月5日に、スタートアップ企業:東京との間で、合弁会社「spacemotion(以下、スペース)」を設立した。スペースはオフィスビル・商業施設・ホテル・マンションのエレベーターを、いわば「小劇場」に変えてしまう事業(エレシネマ)を展開している。

 エレベーター内の扉部分に「映画館のスクリーンに相当する」フィルムを張り、「プロジェクター=映写機」で映像を流すという仕様。エレベーターのドアが閉まるとセンサーがそれを感知し、従来のポスターや単なるディスプレイではなく(オフィスビルであれば)例えばこんな映像が流れるという。

 ★テナント企業の階数(場所)を示すなど、館内の諸々の情報。天気・気象情報。ビジュアルニュース。テナント向けの設備点検や災害訓練の告知。軽めのパロディ等々。

 ★災害時の近場の避難所情報や、鉄道関連情報。●●線の■―■区間は、かくかくしかじかのため運休中といった具合。

 賃貸オフィスビルのオーナーや、(サービス施設の)テナントの負担は月々100円から200円の電気代だけと、限りなくゼロに近い。費用はすべて企業が画面上に配信する製品・サービスの広告料で賄われる。

 エレベーター内の広告で経費が賄えるというは賢策だが、時と場合により「広告ラッシュ」には“うんざり”感が付きまといがち。が、その当たりは百も承知のようで、「1回の広告露出は、エレベーターに乗り込んだ人が1階から2階に移動する時間で完結されるように仕上げてある」とか。

 スペースでは、「いまはエレベーター内の展開にとどまっているが、集客性の高い空きスペースは他にも少なくない。どこにでも活かせる事業」としている。

 進化するテクノロジーは確かに、「豊かさ」をもたらす。今後、どんな展開が進められていくのか注目しておきたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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