人工知能(AI)でにおいをかぎ分けると何が出来る? Google Brainの研究

2019年12月14日 09:39

 「Google Brain」が、AIで「におい」をかぎ分ける研究をしている。分子構造を基に物のにおいをAIに推測させる、機械学習アルゴリズムをトレーニングしているという。

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 「Google Brain」は、その名の通りグーグルの研究チームだ。香りを構成しているのは分子であるそうだが、どの分子構造がどのようなにおいを感じさせるものかについては、明確な基準は現在のところ分かっていない。

 光であればプリズムで分離すると見えてくることは知られている。つまり、波長によって色が違ってくるのだ。これは17世紀アイザック・ニュートンが実験し、赤、オレンジ、黄、緑、青、藍、紫の7色に分離することを確認している。

 光が波長で色分けされているように、分子によって「におい」が決まることは分かっているのだが、どの様な構造でどの様な「におい」となるのか基準は知れていない。

 このように分子構造でにおいを推察するのは困難であると知られているが、それを機械学習で判別出来るようにならないかを研究するもので、グラフニューラルネットワーク(GNN)と呼ばれる手法を使っているようだ。

 「Google Brain」は、ベテラン調香師たちから5,000個の分子を取り寄せ、香りの指標、例えば「ウッディ調」「ジャスミンの香り」「甘い香り」などに分類して教師データを作り、GNNに学習させていった。しかし、これで分子構造から「におい」を正確に判別出来たわけではなかった。

 人間の嗅覚器官とニューラルネットワークの構造は同じではなく、人間が感じている「におい」と同一にすることは難しい。ベテランの調香師でも構造が違う分子を「同じにおい」と感じたりすることがあるようだ。

 また、GNNにも欠点があり、同じ原子と同じ結合様式を持った分子で、配列が左右対称なキラル(対掌性)ペアを見分けることが出来ないのだ。分子構造としては左右が逆転していれば異なる分子となりにおいは別なのだが、判別出来ないのだ。

 また香りを混ぜたりすると、人によって反応はまちまちだが、それを判別する手立てがないのだ。人間の嗅覚とは不思議なもので、反応の仕方のパターンを解読せねばならないようだ。

 しかし、分子で「におい」を判読出来るようになると、「麻薬犬」「警察犬」などに代わって機械を使って漂ってくる分子を捉えられるのであれば、捜査に大きな進歩が期待出来る。また料理などの分野では、「心地よいにおい」をどのようにしたら作れるかなど応用出来るかもしれない。

 意外ではあるが、「におい」についての科学的基準を見つける作業はまだ始まったばかりなのかもしれない。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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