ワールドも足を踏み入れた、拡大するリユース市場
2019年12月10日 09:33
リユース市場が拡大している。リユース通信によると2017年の日本のリユース市場の規模は前年比12.3%増の1兆9932億円。これが同通信の見通しでは、リユース人口と売買頻度の増加で2022年には「約3兆円規模」になるとされている。
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リユース市場の盛り上がりの一因として、「メルカリ」「ヤオフク!」などのネット上での個人間取引の浸透が指摘される。と同時に実店舗での展開に、「自治体運営店」が登場するなどに象徴されるように多様な資本?の参入が認められる。
自治体運営でみると、例えば東京・中央区は「聖路加国際病院」近くの明石町と、羽田空港・成田空港に向かうリムジンバスの発着所、東京シティターミナル/箱崎の2店舗を展開している。
リユース事業とはそんなに儲かるのだろうか。創業60年の老舗で業界首位級のコメ兵は今3月期こそ東京・新宿の2店舗体制への移行に伴うコスト先行で「営業減益」だが、前期・前々期の平均営業増益率は55%弱。
リユース業界に詳しいアナリストは「自治体の参加や老舗上場企業の伸長である種の安心感が拡大の背景といえる。セグメントの8割をリユースで占めるコメ兵の収益動向を振り返ると、儲かると言って過言ではない。今回、アパレル大手のワールドが参戦を表明したのもそうした背景によるものといえる」とする。
ワールドはこの間、M&A戦略を積極化している。18年にはブランドアパレル商品を扱う「ラグタグ」サイトを運営するティンパンアイレを買収。またファッションのレンタルサービスを手掛けるオムニスを持ち分法適用にするといった具合。そして19年10月25日には、総額43億4200万円で広島県のラクサス・テクノロジー(ラクサス)を子会社化すると発表した。
ラクサスは、高級バッグのいわゆるサブスクリプションレンタルを手掛ける企業。収益状況は19年7月期で「売上高13億7900万円、純益3600万円」と斯界の中堅企業。ラクサスの子会社化の狙いは、顧客基盤を共有しワールドの実店舗/ECモールと連携して「リユース市場」への注力・開拓・深耕。
ワールドは18年9月の再上場以来、順調な収益の推移を示している。今期も「12.0%の営業増益、7.2%の最終増益、14円増配の69円配当」計画で立ち上がり、開示済みの中間期(前年同期比34.8%の営業増益、80.8%の最終増益)を受け、通期計画を「23.1%営業増益、33.1%最終増益、72円配当」に上方修正。不振のアパレル業界で気を吐いている。
「相次ぐM&Aを介し、その効果の一つとしてリユース事業の強化を図る計画」と業界アナリストは口を揃える。リユース業界に、勢いのある資本が参入した。(記事:千葉明・記事一覧を見る)