おもてなし、に絞られる知恵
2019年11月12日 20:12
爆買いに象徴されたインバウンダーの日本の楽しみ方が、「体験型に舵を切った」と伝えられる。その意味で興味深い二つの事例を知った。
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1年後の東京五輪・パラリンピックにまさに照準を合わせるように、奥浅草(浅草観音堂裏)に訪日外国人がいかにも喜びそうな旅館が7月20日オープンした。「茶室ryokan asakusa(チャシツ・リョカン・アサクサ)」。不動産物件の賃貸・販売を手掛けるレッドテックの文字通りの「作品」。
外国人に人気の浅草まで、「つくばエキスプレス」「地下鉄・東武線」浅草駅から徒歩圏内。全10室。それぞれデザインは異なるが、全て畳敷きの和室。そこには「日本の居室文化」がふんだんに盛り込まれている。具体的にはこんな具合。
「手漉き和紙の障子」「季節感を覚える掛花(かけはな。四季の花鳥を組み合わせた薬玉:くすだま:形の部屋飾り。公家文化の名残)」「坪庭(京町屋に代表される小規模な和風の庭)」「風炉先屏風(茶道具の一つ。茶をもてなす際に畳の向こう側に置く二つ折りの屏風)」「襖」「暖簾」など、日本独自の間仕切りが設けられている。また「網代天井(竹皮や割竹、杉・檜・椹などの扮板を互い違いに潜らせて編んだものを張った天井)」「小さな扉から潜るようにして入る客室」なども、茶室を模した創り。
建築デザインは、「自然と建築」の融合で知られ、内外の各賞を受賞している前田圭介氏。「庭屋一如」をモチーフにした「江戸らしさを彷彿させる」デザインを前面に押し出したという。アートディレクターは「北川一成の仕事術」の著書でも知られる北川氏。例えば、オリジナルデザインの浴衣等々を手掛けている。
最上階の客室には、「東京スカイツリー」や浅草の街が一望できる露天風呂が設けられている。料金は部屋によって異なるが、朝食付き1泊2日で1人当たり1万2000円から。インバウンダーならずとも無粋な私も泊まってみたくなる。
一方、大阪市ではこんな動きが始まっているという。衰え続ける銭湯。そんな銭湯の経営者が「銭湯は日本の文化だ」と一念発起。近隣の民泊業者に声をかけ、訪日外国人の「訪銭」を企画・実証実験を行った。
入浴前に銭湯の入り方を紹介する動画を流す。入浴料に料金を上積みし(このあたりがいかにも関西人らしい?)浴衣やバスタオル・石鹸などを提供。入浴後は提携店の割安飲料で喉を潤す策も執った。
結果は「クール(かっこいい)!」「ラブジャパン」の称賛の声・声。民宿側からも「風呂の跡片付けをしなくて済む」と好評。いま難波の銭湯に「インバウンダーウエルカム」の流れが根差しつつあるという。
工夫を凝らした「おもてなし」こそ、真のお・も・て・な・し!(記事:千葉明・記事一覧を見る)