完全自動運転車は夢なのか? ルネサスもアーム・トヨタ連合に参加 課題は重く?
2019年10月27日 15:48
ルネサスエレクトロニクス(以下、ルネサス)もアーム・トヨタ連合に参加したようだ。もちろん、インテル・モービルアイに対抗する狙いもあろう。しかし、そもそもレベル5の完全自動運転車開発は、まだまだ夢なのかもしれない。
【こちらも】トヨタ、レベル4自動運転車の体験機会提供へ 2020年夏にお台場で
開発費が膨大で、トヨタグループに参加したスバル、マツダ、スズキ、ダイハツなどは、これからの技術開発費を単独で捻出することは難しい。トヨタとて毎年1兆円の技術開発費を投下し続けることは苦しいところだ。
レベル5の完全自動運転車を夢見る自動車技術者たちだが、コストだけでなく、このままでは消費電力が大きいチップのため、水冷システムを使わねばならなくなる状態で、これでは室内スペースを犠牲にしてしまうかもしれない。
ルネサスの「R-Car」は、独自の論理回路(ハードウエアアクセラレーター)により高速かつ低消費電力で、人工知能(AI)のディープラーニングなど特定の処理を実行することが出来る。すでに量産中の「R-Car V3H」でも発熱量が少なく、小さなカメラモジュールの中に組み込んでも使えるぐらいのため、自動運転の制御機構に最適と思われている。
またルネサスは、セントラルECUに向けて、消費電力は約10W(約6 TOPS/W)を目標として60TOPS(60兆回/秒)のディープラーニングが可能であり、「水冷システムが必要ない低コストの次世代R-Car」を開発中であるという。
こうした技術開発に水を差すわけではないが、「完全自動化」はどの様な動作であってもコストがかさみ難しいのだ。それは、そもそも人間の持つ能力が極めて高く、同等にするには現在のコンピュータではとても大型となってしまうのが現実だからだ。そこで、2割ほどを人間が仕事を受け持って8割をコンピュータに任せれば、1千倍ほどシステム能力が高まると覚えておいたほうが良いだろう。それほど人間の持つ能力は、多くの情報を処理し、的確な判断をすることが出来る柔軟性があるのだ。
例えば、テスラのイーロン・マスクCEOがモデル3量産で手こずったのは、そうした現在のAIを使ったシステムでは、能力がかなり不足していることに気付いていなかったために起きている。量産作業では、ロボットに任せたほうが良い作業が9割を超えているのかもしれない。しかし、判断作業の1割でも人間が関与すると、驚くほど柔軟性がシステムに出てくるものだ。
この人間の優れた処理能力は「経験」の作り出す「直感」と言えるもので、ディープラーニングしているわけでもないのに、その蓄積が保存され、無用な動作をしなくても結論に直結しているように感じる。
さて、レベル5の実現について人間はすでに到達していることは当たり前だが、さらに、人間が持つ「間違い」を補正するシステムを作り上げる方向性により、早い時期にレベル5に極めて近い自動運転システムを作り出すのであろう。
その次には、進化している量子コンピュータほどの処理能力を持てれば、いちいちディープラーニングして判断するAIであっても、「人間の直感」に匹敵する結果を得ることが出来るのではないか。あるいは、結果を蓄積して直感のようにふるまえるソフトの開発が考えられれば結果は違ってくるだろう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)