リアスポイラーなどエアロパーツの効果はある? 100km/hで60kgのリフトフォース
2019年10月13日 09:40
自動車のエアロパーツについて、いつも話題に上るのが「効果はあるのか?」である。100km/h程度までの走行では、特に効果はなく飾りだと言われている。確かにエアロパーツなしで200km/hぐらいになると、高速道路の路面のバンプが気になる。確実に浮いているのだ。だが100km/h程度では実感することは難しい。
空気抵抗は速度の二乗に比例するため、100km/hぐらいで走行していると、エンジン馬力の半分は空気抵抗で食われてしまうそうだ。その意味で、まずは高速道路での巡航速度は100km/hぐらいまでとした方が、燃費に良いようだ。しかし、その時60kgのリフトフォース(地面と車体の間に起きる揚力)が発生しているとは実感できない。
クルマにリフトフォースが発生してしまうのは、飛行機の翼の逆原理があるからだ。翼の断面は前端から40%ぐらいのところが厚くなっており、上側が膨らむような形状になっているものが多い。これで翼上側の空気の流れが、下側の空気の流れに同期するため、速く流れることとなる。空気が速く流れれば気圧が下がるため、揚力が発生するのだ。クルマのボディの形状は、通常では下側は地面に沿って平坦であり、上側の流れが速くなることとなる。そのため浮き上がるのだ。
そうすると、当然にリアスポイラーなどでダウンフォースを得ることは有効であるはずだ。100km/hぐらいで走る場合に60kgのリフトフォースがあるそうだから、リアスポイラーで打ち消すことは操縦安定性に寄与していることになる。
すると、やはりリアスポイラーなどのパーツはあった方が良いのではと思われる。もしエアロパーツをつけていなくとも、危険になるほどのリフトフォースは100km/hぐらいまでなら発生しないが、やはり注意は必要だ。
一時期、「ウィングカー」がレースで活躍していた時がある。これは翼を逆にしたような断面を持ったレーシングカーだったが、ル・マン24時間レースでベンツのウィングカーが宙に舞ってしまい(1999年)、コースアウトして事故となってしまったことがある。
それ以来、ウィングカーは禁止となったのだ。この事故の原因は、ウィングの逆断面なので走っていればダウンフォースにより車体全体が舞い上がることなどないはずだったが、もう一つ、翼の揚力を発生させる単純な空気の圧力を見逃していたからだった。
それは「凧の原理」を思い出せばわかることで、正面から風圧を受けたらどんなものでも舞い上がる力が働く。飛行機の翼でも両方の力を利用している。その2つの力の中で、凧の原理が「迎角」だ。
迎角があると舞い上がるのはすぐに実感できる。レーシングカーでもコース路面の凸凹でジャンプする時がある。その時、ウィングカーで少しの迎角が発生すると、断面が逆さまでもすぐに浮いてしまうのだ。
日常のクルマでの100km/h程度の走行でも、路面次第で浮き上がる時はある。出来ればダウンフォースがリフトフォースを上回るようにしておきたいものだ。それにはやはり、前後のスポイラーが有効なのだ。一方で空気抵抗との兼ね合いがあり、ウィングを立てると抵抗が増えるので燃費には注意だ。そのバランスで決めると良いだろう。
しかしそもそも、日常では「飛ばさない」ことが何よりの安全確保の手段である。高速道路では、箱型のトラックやミニバンなどは、80km/hぐらいまでにとどめておくのが燃費節約などの理にかなっている。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)