真の「観光立国」確立のための一考察
2019年10月3日 08:46
不勉強を悔いている。観光庁が発表した8月の訪日外国人動向に接した時だった。全体で前年同月比2.2%減の252万100人。昨年9月以来、11カ月ぶりの減少となった。
【こちらも】8月の訪日外国人、11カ月ぶりにマイナス 韓国が48%減
そうした状況下で最も大幅に目減りしたのは韓国人で、30万8700人と48.0%落ち込んだ。日韓関係の現状を考えると、ある意味で当然の成り行きだったともいえる。不勉強を悔いたのは、8月の訪日客を国別に示した部分だった。
1位は中国人の100万600人(前年8月比16.3%増)。2位は台湾人の42万300人(6.5%増)。3位は韓国人。4位は香港人の19万300(4.0%減)。電卓を叩いてみた。48%減の韓国人を含めても、上位4か国で約192万人。全体の76%余りを占めていた。
この間、銀座などを歩くと中国語圏や韓国人の団体客が専用バスで訪れ、大声で話し合いながら買い物袋を手に闊歩している光景によく出くわした。中国・台湾・韓国などの近場の海外から日本を訪れている人が多い、という実感はあった。
だがその一方で、TVの番組などでは訪日外国人が訪れた先の地域を楽しみ、食べ物や文化を堪能している光景を目にした。画面に登場する外国人はおおむね欧米人と映ったし、電車の中で出会う観光客の家族はやはり欧米人が多かった。
しかし現実は前記の通り、近隣外国人が4分の3以上を占めている。政権は来年の東京五輪・パラリンピックまでに訪日外国人「4000万人」体制を実現し、「観光立国:日本」の確立を目指している。
菅儀偉官房長官は「韓国人減でも(4000万人に)支障はない」としているが、日本政府観光局では都心部の宿泊施設不足等を理由に「五輪の年は訪日客減少の懸念」(9月25日)としているのも事実。
「不勉強」が、「調べなくては」という思いに私を駆り立ててくれた。前年度ベースで日本のGDPに占める観光収入は1.9%と、世界で30位レベル。いささかデータは古いが2016年版のOECDの「観光白書」では世界諸国の中で30位。10%以上を占める第1位のスペインを初め、ポルトガル・メキシコがベストスリー。
では日本が真の意味で「観光立国」と称されるためには、どんな流れが不可欠か。答えは観光庁の「訪日外客数(2018年12月および年間推計値)」に求められよう。訪日客数の伸び率が2桁台に増加している諸国への、「日本」の徹底したプレゼンテーションである。
2桁台の伸びとなっているのは訪日客数で1位の中国(13.9%増)の他に、以下の様な国々が名を連ねている。「米国:客数5位:伸び率11.0%」「タイ:6位、14.7%」「オーストラリア:7位、11.6%」「フィリピン:8位、18.8%」「インドネシア:11位、12.7%」「ベトナム:12位、26.0%」「フランス:15位、13.5%」「ドイツ:16位、10.1%」「インド:17位、14.7%」「イタリア:18位、19.2%」「スペイン:19位、19.1%」「ロシア:20位、22.7%」等である。
各国向けに「観光親善大使」を配置・派遣するのも一策と思うが、如何だろうか。(記事:千葉明・記事一覧を見る)