孫氏が前澤氏と肩を抱き合った時のサムズアップの意味

2019年9月30日 17:07

 定期的に訪れる中小企業がある。社長なる御仁が「下請けの悲哀」を具体的に諸々話してくれる。大仰にいうと「日本企業の構図」を確認したくなると訪れることにしている。

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 過日、訪れた際に件の社長は「約束の時間に30分くらい遅れる」とのことで不在。秘書役の女性社員に、(ボスの意味で)親指を立て「元気」と聞いた。すると彼女は「(親指立てって)わいせつな表現ですよ」とぴしゃり。

 戻って早々に調べてみた。ウイキペディアに、こう記されていた。『サムズアップ(親指を立てるジェスチャー)は日本では一般に「Good」を意味する。英語圏では肯定的な意味を持つが、中東・西アフリカ・ブラジルを除く南アフリカでは「侮蔑の表現」となる。その他、ヨーロッパやアジアの一部の国ではわいせつな表現となる。・・・古代ローマの剣闘士競技で観客が使っていた「敗者を許せ」のジェスチャーが由来だという説がある』。件の女性秘書の言い分も、全くの的外れとはいえない。

 なんでこんな話を長々と記したのか。周知のとおり、ゾゾタウンを運営するZOZOが、ソフトバンクグループ(SBG)の孫会社に当たるヤフーにより買収された。その狙いは各種メディアで報じられているように「ヤフーをネット通販でアマゾン・楽天と並ぶ3強に止揚すること」で間違いはない。ZOZOの創業者社長の前澤友作氏は、退任した。

 前澤氏の退任発表後、週刊誌等は一斉に前澤氏叩きに出た。一連の“叩き記事”には興味がない。目下一番の興味は、9月12日の前澤氏の「退任発表会」の出来事である。

 時に涙を浮かべつつ「宇宙旅行の夢を・・・新たに事業を起こし世の中の役に立ちたい」と語る前澤氏の前に、一人の男が突然?現れた。SBGの会長兼社長の孫正義氏である。その時の様子を伝えるメディアで2枚の写真を確認した。

 1枚目は肩を抱き合った2人が「孫氏が右親指を立て、前澤氏も左親指」を立てていた。そしてもう1枚は「孫氏は依然として右親指を立て、前澤氏は左手の人差し指と中指でVサイン」を作っていた。

 孫氏が「いい彼女もいるようだし・・・宇宙旅行の夢も持っているとか、羨ましい」と語りかけた。そう話しかけられた時、「自らの去就を孫さんに相談した」という前澤氏の左手はVサインに変わった。果たして2人の指の動きは、どんな意味を持ったものだったのか。それは当人だけにしか分かり様がない。

 が、私は写真に見入っていて、ソフトバンクが携帯事業に乗り出した昔の話を思い返していた。ソフトバンクは自前の通信免許を取得し、1.7GHzを割り当てられ進出の第1歩を踏み出す予定だった。

 だが詳細は省くが、そんな前に姿を現したのが既に日本市場で実績を積んでいた英国ボーダフォン日本法人のウィリアム・モロー代表との出会いだった。当初は「提携」が模索された。しかしある時を境に、孫氏は態度を一変させた。これは孫氏自身から聞いた話である。

 「ボーダフォンが持っていた1500万人の顧客、エリアカバー率99%は提携だけでは生かし切れない。大きな借金覚悟で買収に舵を切った」と。

 果たして買収が成立した時、孫氏が右親指を立てモロー氏と肩を組んだかどうかは定かではない。ただ、今回ヤフーを3大ネット通販業者に仕立てるためには、前澤氏に因果を含めることが不可欠だったことだけは間違いあるまい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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