投票率向上策の「共通投票所」を考える
2019年9月30日 09:06
今夏の参議院議員選挙の全国平均投票率は、48.80%。前回に比べ5.90ポイント下がった。この限りでは「行政改革」「投票率向上」を掲げて前回の参議院議員選挙(2016年)に導入された「共通投票所」の効果を認識することはできない。
公職選挙法に基づく「共通投票所」は、住民(選挙権者)の利便性を図る目的で前回の参院選から導入された。所定の投票所、ないしは選挙区管内の定められた(スーパー等の)商業施設などに設置された共通投票所で、選挙権の行使が可能になる。
で、実態はどうか。先の参院選では前回の同選挙に比べ、所定の投票所は858カ所減った。が、共通投票所は4市町村7カ所増にとどまった。
共通投票所について、具体例を引いてみてみる。我が故郷:群馬県でみると、今春の統一地方選挙で大泉町はまず21カ所あった所定投票所を3分の1の7カ所にし、その全てを共通投票所にした。選挙管理委員会は「これまで1カ所に定められていたものを、バスやタクシーを使う高齢の選挙人が権利を生かしやすくなった」とアピールしている。
青森県つるが市では1月の市議選から導入。所定の投票所を49カ所から17カ所に減らし、やはり全てを共通投票所にした。後の統一地方選(県議選)でも同様の措置を執った。だが投票率は、地元選管では「想定以上に下がらなかった」としているが、前回の75.21%から72.36%に下がっている。
結論から急げば「行政改革」という名の「自治体業務の効率化」にはつながっても、「投票率向上」には結びついてはいないのが現状。
実は総務省の『投票環境の向上方策等に関する研究会』のメンバーである、東北大学大学院情報科学研究科の河村和徳准教授が、先の参院選前のNHK選挙WEBで共通投票所に関し「2つの壁」を指摘・示唆している。要約すると、こんな内容だ。
★ミスの可能性: 焦ってミスが生じるより「今回は様子見」をという自治体が多い可能性が高い。現にそうなったといえる(導入自治体率は1桁台)。
★二重投票阻止: 選管は少なくても「所定の」投票所と「共通」投票所をインターネット回線などでつなぎ(コストを投じ)、投票記録の一元管理をしなくてはならない。
遡って17年の衆議院議員選挙では、こんな事実が明らかになっている。全国の有権者の平均投票率は53.68%。年代別にみると「60歳代」が第1位で「72・04%」、「70歳代」が3位で「60.94%」。高齢層の投票意識は高い。
私の住処:埼玉県所沢市は現時点で「共通投票所」を導入していない。私の所定投票所は、行きは下り坂・帰りは上り坂。先の参院選は、運転免許所を返納した直後の身としては「汗だく、ハアハア」の投票だった。記した、かつ私が体験した高齢者の投票と共通投票所の在り方を、総務省には更に踏み込んだ議論をお願いしたい。「1票の重みを勘案する」というのなら。(記事:千葉明・記事一覧を見る)