東証、「上場基準厳格化改革」の一考察 (上)

2019年9月17日 15:42

 東京証券取引所の「上場基準厳格化改革」の議論が最終段階を迎えたとされる。だが議論のメンバーの1人だった野村証券グループの1社、野村総研の社員がその内容を漏洩して以降、諸々の憶測の類は語られても「内容」については掴み切れない状況が続いている。

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 そうした中、以下の様な2点の見方が兜町の住人の間で日々強まりを見せている。

★東証は、市場を「プレミアム市場」「スタンダード市場」「エントリー市場」の3部構成にする方向。

★プレミアム市場上場の要件基準は、高い流動性と知名度。東証1部の「時価総額500億円超」企業が最有力。

 決して昨日今日出てきた論ではない。株式投資関連の雑誌などは「500億円前後の当落線上にある銘柄に投資妙味あり」とする記事を書いている。兜町(しま)を歩いても「500億円超は、説得力がある。その前後の銘柄で時価総額上昇に繋がる施策を見せている企業を、我々も投資妙味株ありと捉えて営業を強めている」とする声が多い。

 何かと話題を提供するソフトバンクグループ(以下、SBG)の元締め:孫正義氏は「プレミアム市場/時価総額500億円超」論をどう受け止めているか、と問われたという。アスクルとの間でネット通販「ロハコ」の主導権を巡りVS関係を強めていたヤフーの、ソフトバンクの子会社化が明らかになった5月過ぎのことだ。

 ヤフーはSBGからすると「孫」会社に当たる。孫氏は「論」の可否には触れず「SBGのグループの上場企業は、常に最上位市場の銘柄でなくてはならない」としたという。

 なぜ、こんな話を記したのか。SBGの1社に、東証1部のソフトバンク・テクノロジー(以下、SBT)がある。同社の本稿作成時点の時価総額は、475億円余り。「500億円基準」が適用されれば、当落線上の注目銘柄と考えたからだ。

 具体的にSBTの社名こそ聞かれなかったが、ソフトバンク上場後に「株価動向への不満」を口にした孫氏のことである。SBTをプレミアム市場銘柄にするための施策を講じてくる、と読んだからである。昨今のSBTの株主(投資家)対応策は、以下の様な流れにある。

*数期にわたり、自社株買いを継続している。
*2017年6月1日を基準日に1対2の株式分割を実施。
*18年3月期の配当は15円と分割を勘案すると前期と同じだが、19年3月期は5円増配の20円配当としている。

 ちなみにSBTの株を投資対象として薦めるわけでは決してないが、時価(2000円トビ台)に対し、アナリストの予想株価を示すIFIS目標平均株価は700円近く上値にある。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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