木星の中心核、巨大な天体の衝突により形成か
2019年8月26日 07:43
中山大学・Rice大学の劉尚飛准教授、アストロバイオロジーセンターの堀安範特任助教らの国際研究チームは、惑星形成時の大規模な天体衝突によって、木星に巨大な核が形成された可能性があることを発表した。
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■木星の内部構造
木星は太陽系最大の惑星で、その主成分は水素とヘリウムからなる。木星の質量と半径からその平均密度を求めると、水の約1.3倍しかないことが分かる。
中心部に地球の10倍程度の質量を持つ鉄や岩石からできた核があるとされている。核の外側には水素の層があるが、木星中心部の圧力によって液体金属となっていると考えられている。
木星の内部構造はどのようにして調査することができるのだろうか。木星の形状は球形に見えるが、正確には自転のために赤道付近で膨らんだ回転楕円体になっている。
そのため、緯度による重力の変化を調べると赤道付近で重力が最も大きくなる。質量分布が木星の中心に集中している場合はこの変化は小さく、密度が均一になっている場合はこの変化が大きくなる。
NASAの木星探査機Juno (ジュノー)による木星の重力場の測定により、木星内部には以前に予想されていたよりもずっと大きな中心核が存在する公算が高いことが分かった。その中心核は岩石と氷、水素、ヘリウムが混じった密度の低いものと考えられる。この密度の低い大きな中心核はどのようにできたのだろうか。
■今回の研究
研究チームはこの疑問を解決するため、木星が出来上がる大詰めのところで大きな天体の衝突があったという仮説を立て、天体衝突の体数値シミュレーションを行った。その結果、地球の10倍程度の質量を持つ大きな天体が木星にほぼ正面衝突すると、水素やヘリウムと岩石が混じった巨大な中心核が形成されることが分かった。
惑星がつくられるときに起きる天体衝突現象の分析によると、このような正面衝突は確率的に十分起こり得る。このことから、木星が形成される最後の段階で大規模な天体衝突があったと結論付けられる。
本研究成果は、2019年8月15日発行の英国の科学雑誌Natureに掲載された。(記事:創造情報研究所・記事一覧を見る)