ユニ・チャーム「定額制紙おむつ」進出の背景

2019年8月8日 07:44

 サブスクリプションの時代が、「紙おむつ」にまで及んだ。紙おむつ最大手のユニ・チャームが、保育園児の紙おむつで「定額制」に参入した。5種類の大きさが用意され月額は「週5日登園の0歳児で3240円」「同1歳児3024円」「同2歳児2700円」。

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 7月22日配信の共同通信が、「保育士の人材派遣を手掛ける大阪の企業と提携して実現した。今年初めに開始し、導入先は13都道府県の100カ所以上に及んでいる」と伝えた。

 興味を覚えたのはユニ・チャームが紙おむつ業界初の定額制導入に際し、提携した企業の存在だった。ユニ・チャームは、件の報道の詳細を知りたいという問い合わせに対し「BABYJOBに取材して欲しい」との返答だった。

 BABYJOBにアプローチをした。SSMotherホールディングス(以下、同HD)社長の上野公嗣氏から「どんな問い合わせか」とする返事が送られてきた。上野氏が2013年に創業した同HDの傘下には保育士人材の派遣を手掛けるBABYJOBと、保育園を展開する「ぬくもりのおうち保育」がある。運営する保育園は現在、1都1府6県で49カ所に及ぶ。

 上野氏は実は10年間ユニ・チャームに勤務した経歴の持ち主。昨秋のことだった。古巣のユニ・チャームから、「保育園の紙おむつの販売について相談に乗って欲しい」旨の連絡が入った。上野氏にとっても渡りに船?だった。

 保育園の展開に当たり上野氏がコンセプトとしたのは「てぶら登園」。愛着の形成時に、母親が保育園児と手をつなぎ「ぬくもり」を感じさせながら園に通うことだった。それを実現する為に、洗濯代行やおむつの無料提供を行ってきた。

 だが保育園の急展開で、そうしたサービスが経済的にも難しくなってきていた。上野氏は「うちの保育園でも実現できる方法」を基軸に様々、模索した。至った結論が「月額制紙おむつ」だった。「うん」と膝を叩いたユニ・チャームは年明け早々から「定額制紙おむつ」の展開を開始した。

 上野氏はいま「保育所を運営する方々や保育士の皆さんに、自分たちが人材だけでなく、(当方を)保育業界全体のことを考えている事業者だと認識して頂ければ、より深い信頼関係が築けると考えている」とした上で、「我々の保育園でもまずは3年以内に、7割方が定額制紙おむつ状態にしたい」とした。

 保育園(保育士)不足と並び、保育園通園負担の重荷が社会問題になっている。「定額制紙おむつ」は、一つの解決策といえよう。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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