株式投資で老後資金2000万円をつくる一考察
2019年8月6日 19:36
金融庁(の審議会)が算出した「老後に必要な資金2000万円」説が、「年金問題」と表裏一体化し物議を醸したことは記憶に新しい。
【こちらも】老後資金2000万円を貯めるための副業戦略とは
いま、こんな現象が浮上している。楽天証券の6月の「ニーサ(少額投資非課税制度)」と「イデコ(個人型確定拠出年金)」の口座申込数は、5月に比べ倍増したという。業界大手のSBI証券やマネックス証券などでも、同様の事態になっているという。
SBI証券では「2000万円問題の影響で、現役世代が人生100年時代を見据え資産形成に目を向け始めた」としている。ネット慣れしたこうした若者層の動きを歓迎したい。「今どきの若い連中は」などと言えない。逆に中高年層にも刺激を与えよう。
手遅れということはない。65歳定年制が進む中、子育て資金の必要も一巡する55歳くらいから2000万円づくりに励むことにも意義を十分に感じる。株式投資でその方法を思案してみた。
仮に55歳時点で300万円の余裕資金があったとする。これを元手に2000万円をつくれる過去の例を調べてみた。浮かび上がったのが、トランコム。運輸・倉庫業の同社の収益柱は「ロジスティクスマネジメント事業」と「物流情報サービス事業」。前者は「物流センターの一括受託事業」、後者は「全国約1万3000社の提携運送会社の空車情報と荷主企業をITでマッチングさせる事業」。
仮にトランコムの株式を2010年3月期の初値(900円)で仕込み本稿作成時点まで9年半余保有していると、300万円の投下資金は株価の値上がりだけで約7倍に増幅している。現時点での斯界アナリストが目標値とする平均値:IFIS目標平均株価は時価より1000円方上値にあり、更なる上昇余地を示している。
しかし6100円余の時価が今後10年間も7倍に上昇する保証はどこにもない。企業の先行きにはどんな事態が待ち受けているかは分からないからである。
だが私がトランコムに出会えたのは、手元にある「連続増配10期以上の企業」一覧である。同社は前期まで18期連続の増配を実現し、今期も「増配計画」で立ち上がっている。「2000万円づくり」に、連続増配企業への投資はかっこうの手立てとなろう。読者各位には「連続増配10期になんなんとする企業」の検索をお勧めしたい。
と同時に有効な手段として、EPS(一株当たり利益)の伸び率と予想PERの関係を示す「PEGレシオ」があると考える。算出方法については幾多の方法が示されている。本業の利益を示す「過去3年間の営業利益の伸び率÷予想PER」等々。
だが本筋は「今期予想を含む3-5期間のEPS成長率÷予想PER」だと認識する。「値が2倍以上:割高、1-2倍:妥当評価、1倍以下:成長率を株価が反映しきれていない」と評価する。中小型成長株を発掘する上で重宝されている指標だ。個々人が四季報等のEPS推移と予想PERを検索し見出すには、正直言って手間暇がかかる。そんな向きには先の楽天証券に口座を開設(無料)することをお薦めしたい。口座開設者はリアルタイムで「PEGレシオランキング」をその目にできる。
定年10年前からでも2000万円づくりに知恵をしぼり、精を出す。余裕ある老後を迎えたいものである。(記事:千葉明・記事一覧を見る)