筋肉の質と競技パフォーマンスの関係性が明らかに 順大の研究
2019年7月31日 19:38
競技パフォーマンスは、短距離では硬く伸縮しにくい筋肉の選手ほど高い一方で、長距離は軟らかく伸縮しやすい選手が高くなりやすい――。順天堂大学大学院スポーツ科学研究科の宮本直和准教授らの研究グループは、これまで解明されていなかった筋肉の質と競技パフォーマンスの関係性について研究し、明らかにした。
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スポーツ現場では長らく、優れたパフォーマンスを発揮するアスリートは、静止時の筋肉が軟らかく、筋発揮時に硬く収縮するという通念があった。
類似研究では、筑波大学の研究グループ(廣野準一ら、2013年)が、超音波診断装置を使って筋腱の硬度と跳躍パフォーマンスの相関を調べた結果、下腿部にある腓腹筋の硬度とダイナミックな運動能力に相関があると報告。運動時の筋硬度が硬ければ、跳躍などのパフォーマンスが良いとの結果が出ている。
それでも詰まるところ、高パフォーマンスには、バネとなる筋肉が、軟らかく伸縮やすい方が良いのか、硬く伸縮しにくい方が良いのかは明確になっていない。
そのため、順天堂大の研究グループは、短距離選手と長距離選手で速筋繊維と遅筋繊維の割合が異なる外側広筋(大腿四頭筋の1つ)を測定対象としつつ、短距離選手と長距離選手の競技パフォーマンスと筋肉の硬さについて調べた。筋肉の硬さの測定には、筑波大と同様に、超音波診断装置を使った。
その結果、短距離選手は、硬く伸び縮みしにくほど100mのタイムが良く、長距離選手は軟らかく伸び縮みしやすいほど5000mのタイムが良いことがわかった。この研究は、アスリートが高パフォーマンスを発揮する上で、筋肉の質と適正競技の組み合わせ、適切なトレーニング実施の重要性を示唆しており、同研究グループは個人の筋特性に応じたトレーニング法の確立を目指していく。
研究内容は、アメリカスポーツ医学会雑誌「Medicine & Science in Sports & Exercise」オンライン版で公開されている。
なお、同研究グループが2018年9月発表した研究成果によると、筋肉の硬さは、スポーツ遺伝子と呼ばれるaアクチニン3遺伝子などが影響。先天的に決まっている要素が多いという。これらの研究を生かし、スポーツ業界が才能のある選手の選定と育成に向けたプログラム構築に乗り出す可能性がありそうだ。(記事:小村海・記事一覧を見る)