宇宙への大気流出が多くなる磁気嵐のタイプを特定 極地研などの研究
2019年7月31日 20:22
国立極地研究所などの研究グループは7月23日、欧州非干渉散乱(EISCAT)レーダーのデータを使用した極域イオン上昇流の解析結果について発表した。その結果は、CME(コロナ質量放出)と呼ばれるタイプの磁気嵐の場合に、地球大気の上昇流量が特に多くなることを示している。
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■磁気嵐とオーロラ爆発
地球周辺の宇宙空間には太陽から飛来するプラズマの流がある。これを太陽風という。太陽風は太陽の活動によって変化し、密度が大きく高速の太陽風が地球に吹き付けると、地球磁場は激しく変動する。これを「磁気嵐」と呼ぶ。
磁気嵐を引き起こす要因は、高速太陽風が先行の低速太陽風に追いつく現象(共回転相互作用領域:CIR)と、太陽表面の爆発現象であるフレアが発生した場合(コロナ質量放出:CME)がある。
太陽活動が活発になると、太陽風に由来する荷電粒子が地球の磁力線に沿って移動し、主に地磁気極から20~30度付近のオーロラ帯に流入して大気粒子にぶつかる。オーロラはこれによって発光するするものである。
非常に活発なオーロラ現象は「オーロラ爆発」と呼ばれる。オーロラ爆発の際、オーロラ帯の上空では大量のイオン化した大気が宇宙空間に流出することが知られていたが、その時間による変化や磁気嵐との関係などは、確認されていなかった。
■今回の研究
研究グループは、ノルウェーのトロムソ(北緯69度)とスバールバル(北緯78度)の2カ所に設置された、欧州非干渉散乱(EISCAT)レーダーの超高層大気観測データを用いて
、大気イオン上昇流を解析した。
高度400-500kmにおける1996年から2015年までの観測データより、磁気嵐が発生していたときのデータを取り出し、大気イオンの上昇流量や上昇速度を調査した。その際、共回転相互作用領域(CIR)とコロナ質量放出(CME)に起因する磁気嵐をそれぞれ区別
して調べた。その結果、CME起源の磁気嵐の場合にイオン上昇流量が特に多くなることが分かった。
このような地球大気流出のメカニズムを明らかにすることにより、火星や金星など、他の惑星の大気についても、太陽風の変化に対してどのように反応するか理解するのに役に立つと期待される。
本研究結果は「Journal of Geophysical Research」誌に6月14日に掲載された。(記事:創造情報研究所・記事一覧を見る)