伝統の京町家が、訪日観光客の宿泊施設に変貌

2019年7月15日 09:00

 訪日観光客の「京都人気」が高まっている。京都市観光協会の「2018年外国人宿泊状況調査」によると、18年の宿泊者数は122万9030人と前年比10万人以上増えている。そして京都を訪れた外国人観光客が好んで宿泊するのは、「京町家(きょうまちや、1950年以前に京都市内に建てられた木造家屋)」だという。

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 一方、こんなデータもある。京都市が行った「16年度版:京町家まちづくり調査に係る追跡調査の結果」では、残存する京町家は4万146軒。うち空き家率は14.5%の5834軒。09年度版に比べ総軒数は5602軒減少、逆に空き家は832軒増加している。

 世の中にはビジネス上手な御仁がいる。例えば京都市下京区に拠点を構える総合不動産業者のレ・コネクションでは16年から、京町家を改修して今年中の新規オープンを含め40棟余の宿泊施設(紡)を運営している。

 奥田久雄社長は紡の展開の契機をこう語っている。「京町家は歴史的建築物であり、保存していく意義がある。だが空き家が多くなり、管理に困って解体することが多いのが現状。所有者の高齢化や、あるいは相続はしても近くに住んでいないケースが多いため。通常の戸建て住宅やマンション・ホテル・ホテル・ビルなどへの建て替えが進んでいた。対して京町家に宿泊したいというニーズが高まっていた。そこに着目し始めたのが、1棟貸しの京町家宿泊施設だった」。

 ビジネスの枠組みは、こんな具合だ。まず京町家を購入しリノベーションを施す。その上で、投資家に売却する。1軒7000万円から1億円。現状では国内の法人や海外投資家が主たる買主。管理運営はレ・コネクション。「京都を訪れる外国人は4-5人の家族連れが大方。ホテル等では1室での宿泊は不可能。そうした外国人人気もあり年利7-10%で回る。祇園祭などのイベントが開かれる際には投資家自身が、あるいは法人の社員用福利厚生施設として別荘として使うケースも多い」(奥田氏)という。

 京町家を宿泊施設として活用・運営する動きは不動産業者ばかりでなく、異業種や首都圏の大手資本の参入なども増えており「競争状態」の呈を見せているという。 (記事:千葉明・記事一覧を見る

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