性犯罪を考える (下) 刑法規定への疑問
2019年6月19日 18:20
誰しもが首を捻るような性犯罪が多発している。そして「?」を幾つ重ねても納得など到底できない判決が下りている。
【前回は】性犯罪を考える (上) 緊急避妊薬論
ご記憶の向きも多いと思うが今年3月26日、名古屋地裁支部で実の19歳の娘をレイプした父親に無罪判決が言い渡された(検察側は控訴中)。判決要旨はメディアでこう伝えられている。「性交は被害者の意に反するものであった」「若い時から被害者は(実父から)暴力を振るわれ、性的虐待を受けていた」「暴行は相応の強度をもって行われた」-が裁判官は「無罪」と結論づけた。
その理由を「抗拒不能状態に陥っていたと判断するには疑いが残る」とした。私は法律の専門家ではない。だが我が子(娘)を持つ親である。「父親が実の娘レイプした」だけで「万死に値する」と思う。世の大方の方にご賛同頂けると考える。では、裁判官の「無罪」の根拠は何に、どこに基づくのだろうか。
2017年に、1世紀以上も続いた刑法の改正案が国会で可決され新刑法が施行された。基本的に刑の下限を引き上げ厳罰化する改正だった。暴行・脅迫も改正の対象となった(強制性交の罰則も下限が3年から5年に引き上げられた)。
が、そこには「検察は被害者が抵抗困難だった(抗拒)状況を立証しなければならない」とする条件が依然として、残された。同意していない証拠が明確に示されなければ「有罪」にはならないというのだ。
各方面からの抗議活動が巻き起こっている。そんな折にある報道に出会った。6月10日付けのロイター(東京発)である。顔も名前も出し1人の精神科医が語っている。自らも19歳の大学生時代、見知らぬ男から強姦された経験があるという。現在、彼女は性的暴行で傷ついた女性の心理的フォローに当たっている。
そんな精神科医が自らの体験時を振り返り、こう語っている。「暴行が始まった時、身体がフリーズした。その瞬間の記憶が飛んだ。気が付いた時には男が身体の上に乗っていた」。彼女は通告の類はせず、妊娠と分かった時人工中絶した。だがこう言い切る。「(フリーズは)一般的で本能的反応であり、心理的な自己防衛の一形態だ。刑法の件の条件は、被害者の泣き寝入りを助長するだけだ」。
「上」でも記したが内閣府の調査で2017年の性的暴行被害者の被害届率は2.8%。誰にも告げることなく6割近くが泣き寝入りしたとされる(興味本位でなく是非、当時の調査法を知りたいと思うのは私だけだろうか)。
英国・ドイツ・カナダ等の先進国には「同意なき性行為=犯罪」という現実がある。日本がこのまま「性犯罪3流国」で良い理由は全くない。自分なりのやり方で「現行刑法に物申す」行動を起こすべきである。そのつもりで私は「上・下」の原稿を投稿した。(記事:千葉明・記事一覧を見る)