12億年前に衝突した小惑星、クレーターに頼らず落下地点を特定 英国の研究
2019年6月13日 08:20
小惑星の衝突は地球の生命体にとっては非常に大きな脅威であることは、地球誕生以来変わっていない事実で、人類の科学力、技術力をもってしてもその脅威から逃れることはできない。ミサイル攻撃で小惑星を破壊すればよいと考える人もいるかもしれないが、マッハ数十クラスのスピードで飛来する小惑星の速度に追いつき、正確に命中し、それを粉々に破壊できる能力を持つミサイルを人類はまだ開発できておらず、開発に着手すらしていない。
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今から12億年前、イギリスのスコットランドに直径1kmの小惑星が衝突した事件については、2008年にオックスフォード大学とアバディーン大学の科学者たちによって報じられていたが、正確な落下地点の特定まではつい最近までできていなかった。
今からおよそ6000万年前、ユカタン半島付近に直径約10kmの小惑星が落下し、恐竜が滅亡する原因となった事件はあまりにも有名だが、犠牲者は恐竜だけにとどまらず、地球上の生命体のほとんどが絶滅してしまったと考えられている。エベレスト山よりも一回り大きなサイズの岩の塊が空からマッハ20の速度で何の前触れもなく、降ってきたのだから、どんな生き物も逃げようがない。衝突地点から半径1000km圏内にいた生命体はすべて即死状態で、地上はマグニチュード10を超える大規模地震に匹敵する揺れに襲われたと考えられている。
いっぽうスコットランドに落下した直径1kmの小惑星は、それに比べれば小規模だが、それでも地球環境に大きな変動をもたらしたに違いない。経験的な数字を並べると直径10kmの小惑星が地球に衝突する確率は1億年に1度、1kmなら数十万年に1度、150mクラスなら2万年に1度、10mクラスなら10年に1度と言われている。つまり1kmの小惑星衝突事件は、地球46億年の歴史の中では、さほど珍しい事件ではないのである。
だが地球は、月のような大気のない星と違い、侵食や風化作用があるため、数十万年に1度の高頻度で起こってきた小惑星衝突の痕跡はほとんど残っていない。その意味でスコットランドの事例は12億年前という衝突年代を考えれば、発見されたこと自体が奇跡である。
スコットランドの事例で正確な小惑星の衝突地点が特定できたのは、クレーターの発見によるものではない。小惑星衝突によってまき散らされた飛散物質が堆積している分布状況を綿密に調査し、その地形における物質の移動状況をトレースしていった結果、飛散物質流出の源となった出発点が明確になったことによる。
この手法が、地球上ではほとんど痕跡が残らないクレーターを頼らないで、小惑星衝突の事実と衝突地点を突き止めるのに非常に有効であることを、イギリスの研究者たちが示してくれた。同様のプロセスで従来以上に多くの小惑星衝突の痕跡を見出し、その事例を研究していくことで、いつの日か人間の科学力と技術力で小惑星衝突による人類滅亡の危機から逃れるための秘策が見出されるかもしれない。(記事:cedar3・記事一覧を見る)