「座席譲りを広める会」をご存知だろうか!?
2019年5月22日 16:40
過日、所用でJR山手線を使い池袋駅から渋谷駅に移動した。乗り込んだ電車は満席。吊革につかまった。電車が動き出して間もなく、私の前の席に座っていた20歳前後の若者が「どうぞお座りください」という姿勢を示してくれた。私は「有難う、でも大丈夫です」と制した。「席を譲られる歳に見えるようになったのか」と、いささかショックだった。若者は2駅目の高田馬場で降りた。私は彼の後に腰を下ろした。
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そんな経緯を知り合いの女性記者に話した。開口一番彼女は「ダメですよ。素直に好意を受け止めて席を譲ってもらわなくては」として、自身が書いた記事を私の眼前に置いた。読んだ。「うーん」と唸らされた。
東京・品川に総合不動産業を展開する、かんべ土地建物という企業がある。代表取締役会長の神戸三元氏は2004年以降、所属する東京商工会議所品川支部の有志らと「座席譲りを広める会」を立ち上げ「3つのマナー」の啓蒙活動を展開している。
産経新聞に載った中学生のこんな投書がキッカケだったという。「電車でのマナーの悪さは後を絶たない。若者ばかりが座っていて、お年寄りが立っていることも。電車に乗ったら最低限のルールを守るように自覚しなければならない。そのために、気がついた人が一声かけることが必要で、私も勇気を出して注意できるように心がけたい」。
海外生活が長かった神戸氏は帰国後、日本の若者のマナーの悪さを憂いていた。中学生の投稿に感じ入り、背中を押され啓蒙活動に乗り出した。3つのマナーとは「お年寄りや体の不自由な人に席を譲る」「席を譲ってもらったら好意を気持ちよく受ける」「人の迷惑になることはしない」。
記事中に神戸氏のこんなくだりも記されていた。「最近は若い世代は他人については我関せずで、さっさと席に座りスマホに夢中となる光景もよく見られる。来年は東京オリンピック。この様子では“おもてなし”どころではないのではないか」と顔を曇らせるが、「一声かければ若者はきちんと席を譲る」とも語っている。
神戸氏の胸元には社章ではなく、「思いやりの座席」をイメージ(座席と譲られる人・譲るあなたを表す)したバッジがつけられている。50名近い社員全員がつけている。
件の女性記者は記事の見出しを「令和へ繋ぎたい 思いやりのよりよい 社会へ」とつけ、序文で「・・・東京オリンピックを控え都心ではハード面のインフラ整備が進む中、思いやりの心を育てる取り組みにも注目したい」としている。これからは若者に席を譲られたら「有難う」と言葉をかけ、素直に好意に甘えることにする。(記事:千葉明・記事一覧を見る)