AI導入は失敗か? エンタープライズ規模で導入が不可欠 経営者は諦めるな!

2019年5月13日 19:22

 キャップジェミニ・リサーチ・インスティテュートが、中国、フランス、ドイツ、インド、イタリア、スウェーデン、イギリス、アメリカの8カ国の大規模自動車・部品企業の自動車部門エグゼクティブ500名を対象に一次調査を実施し、業界エキスパートおよび起業家多数にインタビューを行った結果を発表した。(出展: ロボスタ

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 “『大規模なAIプロジェクトの普及は失速、ただし、AI導入に成功すれば数百万ドルの営業利益アップの可能性も』と結論付けている。今回の調査レポート『Accelerating Automotive’s AI Transformation: How driving AI enterprise-wide can turbo-charge organizational value(自動車業界のAIトランスフォーメーションを加速する - エンタープライズ規模でのAI推進がいかにして企業価値を高めるか)』”としている。

 調査によると、AIを展開中の企業は2017年に比べ少なくなっている。エンタープライズ規模で実施しているのも10%程度に後退している。よって自動車関連大手企業は、「AIプロジェクトを大規模に導入すれば、営業利益を16%増加させる機会を逃している状況」と結論している。つまりAIを「大規模に導入すれば」、最大営業利益を16%増大させることが期待できるということだ。

 ここでの注目点は、「エンタープライズ規模に導入する」ことが必要であることだ。現在の情勢では、AI導入に失敗または足踏みしている企業が多く出てきた実態が見えてきているが、このようなプロジェクトは「片手間」に試してみることは禁物だ。それはなぜか。「試してみる」程度では、問題が出ると「これはだめだ」と諦めるほうが、気が楽であることが多いからだ。何事も簡単には達成できないが、「これは良いと判断した」ら諦めないことだ。

 「新規のプロジェクト」を取り入れるとき、「メリット、デメリット」で検討することがよくある。しかしこれでは、革新的技術の導入には失敗する。初めから「メリット」をしっかり認識し、「デメリット」は「解決すべき問題点」と理解するのだ。そのためには、広い基礎知識と深い専門知識が必要だが、さらに「経営者レベルでの決断」が不可欠だ。

 「多種少量生産」を進めようとしたとき、「メリットとデメリット」で説明しろと言った経営者がいた。無理に説明することを避けたが、結局「多種少量生産」を取り入れることをしなかった。その企業は、現在存在しない。革新的技術は、どうしても「先見の明」が必要だ。

 現在、AI導入に躊躇している企業は「教師データ」の不備に気付いているだろうか?

 例えば、これまでの数値制御を使用してロボット制御をしているものをAIによる制御に替えるとしたら、おそらく大多数の企業で教師データが不足している。その状態でAIが期待通りの動きをしないことで、導入を諦めていると進歩はない。確かに、現状の制御で満足しているとすると、AIがさらなる成果を上げることは期待できないかもしれない。しかしそれも一時停滞であり、これからデータが揃えばこれまで以上に成果が出ることとなる。

 このようなことは、ちょうど自動車の完全自動運転開発に見られるようだ。今は不正確な問題があるが、教師データが揃ってくるとAIの判断は人間を超えることとなる。しかしエンタープライズ規模で推し進めることが出来ないと、「しぼんでしまう」ように消えてしまうだろう。これはAIの開発に限らず、どのような業種、業態のあらゆるプロジェクトでも起こることだ。経営者は肝に銘じて、導入を決断したら先頭に立って推し進めることが肝要だ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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