長谷工にみる少子化時代のマンションの在り方
2019年4月23日 11:46
長谷工コーポレーション(以下、長谷工)の辻範明社長を取材する機会を得た。その折に需要減少が懸念される、マンション事業の「少子化時代への対応」が話題となった。辻氏は「ストックビジネス(マンションの建設販売)の展開を進めつつ、付加価値を重視しかつフロービジネスにも注力していく」とした。
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いまの長谷工の動向を確認してみた。マンション建築では依然、首位の座にある。土地手当・計画立案・施行まで一貫したビジネスが堅調に推移している。が、そうした中で辻氏の言を裏付ける流れも確認できた。
NTT西日本と「顔認証を用いた開錠や、宅配ボックスの着荷通知」など「付加価値創造」のための、IOTマンションの実証実験が始まっている。またこんな「なるほど」と頷かされるフロービジネスへの注力を知った。
昨今、不動産活用・運用で「トランクルーム」が存在感を増している。かれこれ10年近く前の2010年10月に長谷工グループの1社:レジデンシャルサービスが、長谷工が建築した賃貸マンションの1階部分にトランクルーム(ライブBOX)を設営した。
保証人代行や家具・家電のレンタルサービスを展開していた同社が、ライブBOXに進出したのは「おそるおそる」の感だった。千葉県・東葉高速鉄道「八千代緑が丘」から徒歩3分の賃貸マンション1階の入居者(店舗)が退室したのが契機だった。「住宅用に改装」する方法もあったが、マンションの1階部分は入居者確保が決して容易ではない。考えあぐねた結果、至った結論が拡がりを見せ始めていたトランクルームだった。
当初は厳しい状況が続いたようだ。が、「ライブBOXへの入り口はオートロック、かつ利用者だけが持つカードで入室できる」「個々の収納スペースはピッキングが困難なディンブルキーを設置」「防犯カメラや防犯ブザーも随所にセット」「万が一トラブルが発生した際には警備会社に自動で通報され、緊急時には警備員が駆け付ける」等々のセキュリティ性が評価され、徐々に稼働率が高まり現在では95%に達している。
そして今年4月中旬には2弾目となる、JR・千葉みなと駅から徒歩3分の「千葉みなと店」が開設された。長谷工の建築による賃貸ファミリーマンションの1階。実証実験といっては語弊があろうが「八千代緑が丘店」の成功が背を押しての本格展開のスタートだ。同社の関連者は「マンションはどうしても居住空間の広さを求める結果、収納スペースが手狭になってしまう。ライブBOX付きマンションというのも一つの方向でしょう」と自信を見せている。
少子化時代のマンション建築には「フロービジネス」という名の「付加価値」が必須となってこよう。(記事:千葉明・記事一覧を見る)