大垣共立銀行:土屋頭取、長期26年政権の「功」
2019年4月8日 08:37
大垣共立銀行は土屋嶢(たかし)頭取が会長職に就き、境敏幸専務が頭取に就任する人事を明らかにした。26年ぶりの頭取交代である。土屋氏は「ドライブスルーATM」「年中無休店舗の設置」「通帳・印鑑・カード不要。手のひらをかざすだけで引き出し可能サービス」などなど、幾多の業界初の施策を展開してきたことで知られる。「厳しい地銀」が指摘される中で同行の業績動向は、直近の四季報の表現を借りれば「上向く」。
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土屋頭取を初めて取材する機会を得たのは、拙著「こんな銀行はやめなさい」を上梓した1996年中頃のことだった。いまでも土屋氏の発言は頭に残っているし、拙著にも記されている。
★ATM・CDコーナーam7時~pm8時体制(土日祝祭日am8時45分~pm5時):「当行の地元は工場が多い。顧客も工場勤務者が多い。工場は朝8時から8時半には動きだす。働く人たちはそれに間に合うように出社する。出勤前にお金を引き出したい、預けたいという顧客には8時45分にコーナーを開けていたのでは間に合わない」。
★「銀行業はサービス業。我々はこのことを肝に銘じなくてはならない。コンビニで公共料金の振り込みができ、取扱高は急増している。我々は恥ずべきだ。猛烈に反省すべきだ。我々のおざなりな顧客サービス、サービス業としての怠慢が原因なのだから」。
★徹底したディスクロージャー:「金利勝負はしない。金利だけで動く顧客には当行を利用してもらわなくて結構。その代わり知恵を絞り、少しでも使い勝手がいいと評価してもらえる銀行を目指す。安全性を計るデータを提供することにしたのもその一環。95年中間期から破綻先債権に止まらず、延滞債権・金利減免債権まで含めた不良債権の開示に踏み切った。具体的には総貸出残高1兆9128億円に対し200億円余り。銀行は安心を売るのも商売だと考える」
★年収公開:「96年3月期決算発表の席上で、頭取の年収はどの位かと聞かれた。4500万円と答えた。行員の職能別給与水準や社宅のスペース・家賃、社内預金金利、銀行員のアフター3時についても開示する用意があるとも答えた。うちのことを知ってもらえて初めて、信用してくださいと言えるわけだから」。
記しだしたらきりがないが、大垣共立銀行では『なるほど』と題するディスクロージャー誌を発行している。中で「サンクスポイント・プレゼント」なる一項について説明されている。預金の月中平均残高・貸金庫や公共料金振替利用の有無など、取引状況に応じ所定のポイントが供与される制度。ポイントに応じプレゼントが支給されるが、ポイント数は容易に分かる仕組みである。毎月末のポイント数が預金通帳に打ち込まれるシステムになっている(実用新案登録済み)。
26年間という長期の在任に異論があるかもしれないが、銀行=サービス業に徹して走ってきた土屋氏に私は「26年間、お疲れ様、ご苦労様でした」という言葉を贈りたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る)