ガンマ線バーストのスペクトルと光度の相関関係を再現 理研など
2019年4月6日 21:33
理化学研究所(理研)の伊藤裕貴研究員らによる研究チームは、スーパーコンピュータによる数値シミュレーションによって、ガンマ線バーストにおけるスペクトルと明るさの相関関係を理論的に再現することに成功した。
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■ガンマ線バーストとは
ガンマ線バーストは数秒から数時間に渡ってガンマ線が宇宙から降り注いでくる現象。宇宙で最も激しい爆発現象として知られている。
ガンマ線バーストの原因としては超新星爆発の際に噴出される超高速なジェットによるものや、2つの中性子性が合体してブラックホールが出来るときの光子の放出によるものが考えられる。
■ガンマ線とは
ガンマ線(γ線)とは、目に見える光(可視光)と同じ電磁波の一種である。電磁波は波長が短い(周波数が大きい)程エネルギーが強くなる。ガンマ線は最も波長が短い電磁波のため、最もエネルギーが強い電磁波である。電磁波を粒子として考えたとき、ガンマ線光子1個のエネルギーの強さは、可視光100万個よりも強力である。
ガンマ線は1896年にポール・ヴィラールによって、ラジウムから放射されていることが発見された。それまでに発見されていたアルファ線とベータ線からの類推で「ガンマ線」と名付けられた。名付け親はアルファ線とベータ線の発見者であるアーネスト・ラザフォードである。
■米徳(よねとく)関係
明るいガンマ線バーストは、放射スペクトルのピークエネルギーが高いことが観測結果から知られている。ピークエネルギーは放射の波長を表しており、可視光の場合は光の波長によって色が異なる。これは恒星の表面温度が高くなるにつれて赤→黄→白→青白と星の色が変化する関係に似ている。
■今回の研究成果
今回、研究グループは「光球面放射モデル」に基づくシミュレーションによって、米徳関係が再現されることを確認した。
「光球面放射モデル」とは大質量性から噴き出すジェットが球状に膨張し、そこから大量のガンマ線が放射されるという説である。シミュレーションによる計算結果と実際の観測結果が一致したことはこのモデルの妥当性を示している。
本研究は、大質量星の爆発メカニズムを解明するためのキーポイントであり、現代宇宙物理学での最大の謎であるガンマ線バーストの全容を解明する重要な一歩となる。(記事:創造情報研究所・記事一覧を見る)