米国金利の「逆イールド」発現を考える

2019年3月31日 21:15

 米国で長期金利が短期金利を下回る逆転現象(逆イールド)が発現した。3月22日に指標国債の10年物金利が一時2.41%まで低下し、TB(米財務省証券)3カ月物の2.46%を下回る「逆イールド」となった。この日のニューヨーク株式(ダウ)は「世界経済の下振れリスク」を嫌気し、460ドル安の2万5502ドルと下落。逆イールドは「不安の予兆」とされる「経験則」である。

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 また27日も逆イールドに昼前に232ドル安まで下げた。「1-3月GDP」見通しを引き上げる市場関係者の見方が伝えられ反転場面も出現したが、結局32ドル安2万5625ドルで引けた。

 今回の逆イールドの契機としては、20日の米国FOMC(米連邦公開市場委員会)に求められる。FRBのパウエル議長は委員会後の会見で「景気の先行きに不確実性が増している」と「景気予測の下方修正」を示唆、「金利政策(利上げ)には辛抱強く臨む」と「年内の利上げなし」を発信した(と市場は受け止めた)。これを受け一気に「利下げ観測」が強まった。

 そして逆イールドが発現した22日には世界最大級の金融調査会社:IHSマークイット(拠点、ロンドン)が3月のEU圏の製造業PMI(購買担当者景気指数)速報を2月の51.9からさらに低い51.3とした。ロイターの専門筋への調査平均値52.0を大きく下回った。

 こうした背景を基に、逆イールドが起こったといえる。確かに逆イールドは尋常な現象ではない。何故ならそれは「将来の利下げ(景気後退)を織り込むゆえに起こる長期金利低下」だからである。

 現時点では誰もこの現象を断じ切ってはいない。「先々の不確実性の高まり」とする反応に留まっているのが大方だ。ただこんな経験則がある。米国債投資で知られるジム・ビアンコ氏が社長を務める調査会社:ビアンコ・リサーチでは、過去50年間の分析から「10年物国債利回りがTB3カ月物を下回る逆転状態が10日続いた場合、平均で311日後に景気後退が始まる」としている。世界の景気動向を占う上で米中協議の行方に加え、厄介な「経験則」が頭をもたげた。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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