金融庁ばかりか国税庁も敵に回した生保業界

2019年2月26日 18:07

 詳細は後述するが「節税保険」と揶揄された(主に)中小法人向け生命保険が、監督官庁の金融庁ではなく国税庁の意向で実質上販売停止となった。この事実を知った時、本音を言うと「中小・零細企業を虐めるなよ」と思った。

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 フリーランスのライターとして20余年間を費やしたが、名ばかりとはいえ法人組織(有限会社)を執っていた。家内を役員に据えるなどして、である。最大の要因は万が一に死亡した場合に、会社(家内等)にいくばくかのまとまった資金が残るようにしたかったからであり「退職金」代わりにしたいと考えたからである。組織に身を置いていた時期からの厚生年金は継続していたが、よほどの売れっ子ライターになり売れ筋の書籍を次々に上梓しなくては「老後の資産づくり」などできないという思いもあった。

 その意味で月々10万円程度の保険料で企業保険に加入しようかと真剣に思った。が、幸か不幸か、実現できなかった。実質個人営業ゆえに「厚生年金保険料」等だけで月々の負担が10万円余りになり、余裕がなかったからである。

 国税庁の逆鱗(?)に触れ今回「販売停止」に追い込まれた「節税保険」の発端となったのは、業界最大手の日本生命が2017年4月に経営者向けに発売した「プラチナフェニックス」だった。17年度1年間だけで、約5万6000件(年間保険料100-200万円が主体)を販売するヒット商品となった。第一生命・明治安田生命・住友生命の大手各社も追随した。ではなぜ、国税庁の逆鱗に触れたのか。以下に要約できる。

 *経営者の死亡に備えて企業が加入する生命保険であり、保険料は全額経費に計上できる=利益が圧縮されることで法人税の支払いが軽減される。

 *およそ10年程度で中途解約すれば、支払い済み保険料に近い解約返戻金が支払われる=役員報酬などに充てることで課税回避が可能になる。

 そもそも「プラチナフェニックス」をはじめ各社の商品群は、利鞘が薄い。上記の通り10年で解約返戻金が最大になるように設計されているため、体力のある生保でなくては扱えない。生保のすそ野も広い。中堅生保以下に「節税関連商品を出したら、潰れかねないぞ」という警鐘を鳴らしたと捉えることもできる。

 だが日本の企業の8割は中小企業。「8割」によって日本経済は下支えされていると言って、決して過言ではない。「節税」と「脱税」は別物。中小零細企業の存続を支える金融商品があってもおかしくないと考えるが、各位はどう思われるだろうか。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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