合意なきブレグジット(1) 日産、ホンダの撤退がイギリスの致命傷となるか?

2019年2月21日 12:25

■ホンダの場合

 ホンダの八郷隆弘社長は、英国生産撤退について、必死に「BREXIT(ブレグジット)とは関係ありません」と繰り返した。ホンダの英南部スウィンドン工場では、「シビック」ハッチバックを年間約16万台生産しており、社員は3500人が働いている。しかし、現地ヨーロッパで販売するはずが、約55%が北米向け輸出で、イギリスからの輸出総数は生産台数全体の65%となってしまっていた。「需要地で生産する」原則になっていない。メキシコ工場においても、これまで米国向けフィットの生産をメキシコ中部グナファト州の「セラヤ工場」で行ってきたが、次期2021年型モデルのフィットは日本で生産し、米国へ輸出する方針のようだ。「セラヤ工場」では当面、SUV「HR-V(日本名:ヴェゼル)」の生産のみを続ける。

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 ホンダは、米国向けフィットを「埼玉製作所寄居工場(埼玉県寄居町)」で生産する。17年2月に生産をメキシコに移し、また日本国内での生産に戻すことになる。SUV人気が世界的に巻き起こっている中、米国ではフィットなどの小型車の販売が減速している。こうした中、「スウィング生産(売れる地域で造る)」を各メーカーは模索している。

■日産の場合

 「合意なきBREXIT」が迫る中、日産は、英サンダーランド工場でSUV「エクストレイル」の次期モデル生産計画を取りやめる。イギリス国内で年間175万台弱の四輪車生産台数の内、7,000人の従業員を抱えるサンダーランド工場は、年間44万台を生産する。これが、イギリス経済にとってどのようなことを意味するのかは、容易に想像がつく。

■自動車産業の重要性

 このように、ホンダ、日産の撤退だけでも、イギリスでは1万人規模の工場労働者の雇用が危ぶまれる情勢だ。さらに、トヨタなども検討中で、BREXITの影響はイギリス経済の存亡を左右する規模となる可能性がある。それは、自動車産業がグーグル、アマゾンなどのネット産業よりもすそ野が広く、関連する産業に従事する労働者の数は読み切れない状態だからだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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