極めつけ!「スバル・シンメトリカルAWD」と「アルピーヌA110左ハンドル」
2019年2月17日 10:26
このほど、アルピーヌ・ジャポンが新型「アルピーヌA110」の左ハンドル車を日本で販売中止とした。ということは、これまで売っていたことになる。左側通行の日本では、メーカーに右ハンドル車があるのなら、当然右ハンドル仕様のみの販売となるのが常道だ。なのに、「アルピーヌA110」の左ハンドル車が売られていたワケはなんだろうか。これは、自動車マニア、しかもハンドリングについて繊細な感触を理解できるほどのドライバーでなければ理解できないことだ。さらには、操縦性についてかなり敏感な車でなければ、必要ないことでもある。
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■スバル・シンメトリカルAWDとは?
一方、スバルの「シンメトリカルAWD」はカタログでは強調されている部分なのだが、大多数のユーザーは関心も示さない項目だ。また、一般論として、FF、FR、RR、MRなどエンジン搭載位置でハンドリングが左右されることは知られている。現在では、この区別もあまり知らないし、関心もないユーザーが大多数となってしまった。「車は動く物体だ」と言っても、それを心底理解している人さえ少数だ。しかし、自動車の操縦性においては、前後の重量配分は重要な要素であり、FFやFRであっても前後重量比率50:50に近づける努力をしているメーカーもある。
スバルの「シンメトリカルAWD」とは、クルマの重量配分において、前後ではなく左右のバランスの問題だ。上から見ると、スバルのメカニズムは左右対称(シンメトリ)に配置されている。ボクサー(水平対向)エンジンで低重心を作り出そうとしていることもあるが、スバルはシンメトリカルにこだわっている。それは操縦性能に大いに関係するからだ。スバルが採用し続けるAWDにとっては、4輪にかかる重量配分が同じになるのが理想なのだろう。
日常、街乗りで走る限り、「FFとFRの差」でさえほとんど感じる必要はない。実際は日常走行の場面でも、明らかに特性が出ているものだが、実用に関わるほど差は出ない。しかし、ワインディングなどを走ると、その差を感じる場面が出てくる。
【参考】 SUBARUのクルマづくり
■アルピーヌA110が日本で左ハンドルを販売する訳
残念ながら、アルピーヌA110を走らせたことがないので想像でしかないが、「試乗記」などを見ると、この車は「ライトウェイトスポーツ」の領域で、かなりの機敏さを持ち味としているようだ。もちろん、先代のA110はラリーチャンピオンであり、当たり前のようにハンドリングは機敏だ。
この世界では、重量配分の差は如実にハンドリング特性に現れると思われる。新型A110では、先代A110のRR(リアエンジン・リアドライブ)をやめてMR(ミッドシップ)としたため、前後の重量配分は理想に近いようだ。しかし、A110は元々左ハンドル車で、全てのセットアップは左ハンドルに合わせていると思われる。こうしたシビアなハンドリング特性を持つ車では、元々の車のセットアップである左ハンドルでないと、真の特性を味わえないとする見方が常識なのだ。
そうしたマニア向けに、ルノーは左ハンドル車を日本で発売していたようだ。とてもこの差を感じ取れるほどの腕は常人にはなく、重量配分の差を問題とできる車も限られているのだ。
■スバルには、素直な特性を持つ車を造り続けてほしい
だから、「シンメトリカルAWD」をスバルがいくら宣伝しても、実感としてそれをハンドリングで味わえる人もまれなのだ。確かに、思った以上に直進安定性、旋回安定性が良いとは感じられるが、それが「商品力」としてユーザーに感じられるほどの訴求力はない。もったいないことだが、スバルが求め続けているAWDの性能にも、シンメトリカルはかなりの影響があるようだが、残念だが、ほとんどユーザーに対しての「商品力」にはならないと感じる。4輪の重量配分が均一であると、制御プログラムの組み方にも影響を与えるが、電子制御なしでメカニズムだけで素直な特性を持つ車を、スバルには造り続けてほしいものだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)