銀行融資の現状に対する素朴な疑問 (上)
2019年2月11日 20:05
日銀が2月8日にまとめた「貸出金統計」によると、2018年末の国内銀行による国内貸出残高は504兆3974億円。1997年以来となる21年ぶりの高水準となった。「景気回復と低金利を追い風とした中小企業への貸し出しが増えた結果」と説明される。
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が、銀行業界に詳しいアナリストは、こんな疑問を呈する。「融資に占める大手行の比率は97年末の64%から昨年末は46%に低下している。大手行は海外融資に活路を見出そうとしている。国内融資の主体は地銀に代わっている。金融緩和下のあふれたマネーを地銀は、不動産と中小企業に回している。こんな現実がある。地銀全体(105行)で過去3年間に融資量を増やした地銀ほど、増やさなかった地銀より収益力が落ちている。貸出利回りの低下が要因だ」。
この指摘は東京商工リサーチのデータも裏付けている。「国内銀行の18年3月期の貸出金利の利鞘は0・25%。98年以来の500兆円台の融資が行われても、収益は1兆4000億円ほど少なくなる勘定」。要するに「貸出貧乏」状況というわけだ。
昨年9月、BIS(国際決済銀行)が『ゾンビ企業の台頭』と題する報告書をまとめ公に発信している。BISは「ゾンビ企業」を、「10年以上存続し、過去3年以上にわたり利払いが利益で賄えていない企業」と位置付けている。報告書の内容は要約すると、次のようになる。
★日本を含む14カ国では、上場企業の12%が過去3年以上にわたり債務の利払いを利益で担保できない状況にある。ゾンビ企業の比率は80年代後半には約2%に過ぎなかった。
★台頭した背景には、金融緩和による金余りに伴う低金利がある。銀行は少しでも利回りを上昇させようと、リスクの高い企業への融資に積極的になることに起因する。
★ゾンビ企業のシェアが1%上がると、健全な企業の設備投資は17%・雇用の伸び率は8%下がり経済全体の生産性の伸びを0.3ポイント押し下げる要因となる。
手放しで「融資残高の増加」には喜べない理由がある。ゾンビ企業の破綻は融資銀行の焦げ付きを意味する。(記事:千葉明・記事一覧を見る)