快進撃続くスバル北米販売 「LOVEキャンペーン」の成果か? GM販売網取り込みか?
2019年2月4日 08:56
2018年のスバル・オブ・アメリカの年間販売数は、68万135台と前年比5%増加だ。北米スバルの販売政策はユニークだ。「スバリスト」と言われるスバルオーナー自身がボランティアで販促活動を演じる。それが「LOVEキャンペーン」だ。さらに、リーマンショックの時、GMの縮小に伴って販売網を手に入れたことが大きいと言われている。ともかくも、これで年間販売台数は、11年連続で前年を超えた。「品質偽装問題」を抱えながらであるが、北米でのスバリスト達のスバル車に対する信頼と彼らの団結は、少々のことでは揺らがないようだ。販売施策としては理想的な展開を見せている。
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■2018年のスバル北米販売の明細
販売が増加したのは、「クロストレック」(日本名XV)だ。2018年は前年から3万4,246台(31.1%)増加している。この1車種だけが大幅に伸びたために、年間で増加することが出来たが、その他の車種は軒並みマイナスを記録した。
「フォレスター」の販売台数は、2017年比6千台ほど減らして3.4%減だった。モデルチェンジ時期が2018年後半のため、2018年中ではいわばモデル末期となったためだ。売れ筋「アウトバック」も、現モデル末期が響いたのか1万台ほど減らし、17万8,854台の5.3%減となった。「クロストレック」以外は軒並み前年比割れする中、販売好調なのが「アセント」で、発売早々3万6,211台を記録して全体を救った。「アセント」は3列シートSUVで、ミニバンが普及しないアメリカにおいて、多人数に対応する車種だ。日本でのミニバンの代替えとは違う需要であろう。
■「LOVEキャンペーン」の威力
このキャンペーンは、北米の販売でスバルだけが展開するシステムだが、実際のオーナーが事実上の販促活動をしたり、クレームに対応したりしている。その中で、専門家が見過ごしている働きに「スバル車の使い方、楽しみ方」を広めていることがある。これは、自動車オーナーの【ライフスタイルに対する提案】となる要素であるが、あらゆる業種においても、他のどんな広告活動よりも強力であるのは明確である。さらに、クルマを実際に使用しているユーザーの言葉は、何より説得力があると思われる。アメリカ社会での一般的な自主的活動の在り方は知らないが、小児がんに寄付活動をするなど、「アメリカ社会独特のボランティアに対する感覚」があると思われる。
キャンペーンの運営も、ユーザー自身で厳しく行われており、社会活動として成り立っている。見返りは僅かなもので、収入を得るために行える活動ではない。このアメリカの「スバリスト」と言える集団の強さは、品質偽装を乗り越える手段としては最も強力ではないかと感じる。日本社会でも「ボランティア活動」が認知されてきており、自動車業界全体でIoTなどのつながりを手段として捉え、スバルの「LOVEキャンペーン」を取り入れると、縮小する自動車市場を再活性化する強力なものとなるのは明白だ。
この動きについては、自動車メーカー全体で研究することが望ましい。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)