ライザップは手にした原点回帰の機会を生かし切れるか
2019年1月28日 09:13
先に「企業・産業」欄で軽々にも「ライザップは金融機関を有しコングロマリット化を図ろうとしている」と記してしまった。反省の意味も含め、ライザップグループの瀬戸健社長のここ2年間程の諸々のインタビュー記事を読み返してみた。
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印象的だったのは前身の『健康コーポレーション』の設立の経緯。豆乳クッキーを販売していた。何故か、について瀬戸氏はこう振り返っている。「高校3年生の時に、体重70キロの彼女と付き合っていた。一緒になって痩せようと、揃ってジョギングをしたりして励まし続けた。彼女はなんと3カ月で25キロも痩せた。どんどん綺麗になっていった。内向的だった性格も外交的になり、きれいになりすぎてしまい、僕は結局捨てられてしまった。豆乳クッキーを、と考え付いたのは彼女が必死にダイエットと取り組んでいるときに好きなお菓子も口にせず苦しんでいたことが頭にあったのがキッカケだった」。なんとも意地らしい話。健康コーポレーションはその後、石鹸・美顔器を手掛けるようになり辿り着いたのが「ダイエットジム」だった。
周知の通りライザップグループは次々と企業買収を進め、それが仇となり今期は初の赤字転落(中間期開示時点で通期予想を33億円の営業損失、70億円の最終赤字と大幅に下方修正した)。
日本の企業風土にプロ経営者は馴染まない、という声がある。が、ことライザップについては現時点で、少なくても「プロ経営者に救われた」といえる。カルビー会長からライザップの代表取締役に招かれた、松本晃氏だ。赤字の責任をとり代表権を返上し、取締役・構造改革担当に身を転じている。「本業にそぐわない」「足を引っ張る」傘下企業の淘汰・再編を担うと宣言している。既に1月25日にはジャパンゲートウエイ(日用品販売会社)の売却を発表した。売却額は公表されていないが、特損を計上するというから淘汰が進む過程で今期の赤字額は膨らむ可能性もある。
だが松本氏は「これが若き経営者の企業を成長路線に戻す唯一の道、それを果たすのが私の役割」と確信しているに違いない。カルビーを知るベテランアナリストからこう聞いた。「国内市場を盤石にした上で海外進出への道筋を着けた時点で、松本さんはカルビーでの役割は終わったとした。人の口に蓋はできない。そんな意向が漏れ始めると招聘の声が数多く上がった。推測だが中からライザップを選んだのは、若者企業を構造改革で次のステップに止揚したいと考えたからだろう」。
瀬戸氏はこれで「豆乳クッキー」を商い始めた頃の「原点」に立ち返る機会を得たともいえる。若手経営者の双璧と称されてきた、前澤友作社長率いるZOZOも中間期「営業・最終減益」となった。通期計画は変えていないが今年に入り、オンワード・ミキハウスといった「取引停止」企業が相次ぎ「大きな曲がり角」論にまたぞろ晒されている。業界のアナリストは「前澤氏に物が言える存在がいない」と口を揃える。前澤氏もZOZOTOWNに出店しているメーカーがあってこそのビジネス、という原点に立ち戻る契機を何らかの形で掴むべきといえよう。(記事:千葉明・記事一覧を見る)