【第四次産業革命に必要な技術(3)】生産技術の進歩は設計技術の進歩と一体

2019年1月17日 17:25

■3.モデルベース設計、モジュラー設計など開発・設計技術の進歩

 コンピュータの中での設計技術が進歩し続けているが、現在では「試作・テスト」段階を大幅に省けるほどシミュレーション機能が発展し、強度計算など各種の技術計算も行ってくれて、設計がスピードアップしている。過去のデータが適切にあれば、今後はAIによる熟練が何かを生んでくれるのかもしれない。

【前回は】【第四次産業革命に必要な技術(2)】 産業革命とは2.生産技術 の進歩だ

 また、モジュールに分けて、すでに実績のある部分を組み合わせて新車種を描くこともできるため、開発期間の短縮が推し進められている。この考え方は古くからあるもので、自動車開発に限った技術ではない。プログラム開発のほうが先かもしれない。そのためか、「開発・設計ツール」開発のソフト技術者の認識が先行しているようだ。注意が必要なのは、ソフト分野であると「プログラム開発」が終われば量産は容易い。しかし、自動車製造では「量産」のほうが一仕事だ。サプライヤーの製造や生産能力のレベルを掴んで適切な設計をしなければならず、生産技術のサポート部隊との連携も欠かせない。サプライヤーと言っても企業同士の契約関係が多く、信頼関係構築が基礎とならねば、途中で瓦解することも有り得る。

 さらに持続して「高品質」を保つ技術には、忍耐が必要であり、組織全体の力量が試される。社員に対する厚生分野の支援も大切で、職制による組織のガバナンスだけでなく、組合組織におけるガバナンスも大きく左右する。これら全体を捉えている経営者も少なくなり、金融知識のみを信じていると組織そのものが揺らぐだろう。特に、M&Aの知識を絶対としている管理職は、製造技術のみを絶対として信じる職人気質と共通する視野の狭さが伴う。

 結果的にせよ、これらの人事を投資家に任せてしまうのが現代の企業の特徴だが、だからこそ投資家が利口になって企業全体のガバナンスをコントロールする実力が必要だ。残念ながら、人事の手法まで含めた品質管理の技術を、伝統的体質として保っている企業はごくわずかであり、成功した手法が変化に追いつけずに、企業の寿命をきわめて短いものにしている。これが「物言う株主の実態」と捉えておくと、現代の企業の将来が見通せる。経営者の交代においても、乱されてはならない基本中の基本だ。

 さらに、「一括企画・設計」が求められるようになってきた。これを実現するには、サプライヤーチェーンの構築も開発と同時に進めることが必要となった。製造・生産技術だけでなく、M&Aの知識や管理技術の進歩が必要になってきている。グローバル展開している生産拠点の品質レベルを揃えなければならないが、品質のばらつきはコストに直接影響する時代となっている。この点の遅れが気になるのがアメリカ企業だ。GMの危機は、政治力で抜け出せないのは当然であろう。「生産方式」「開発・設計方式」の改革が急務だ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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