地味な不動産企業カチタスに吹き始めた「空き家問題」というフォローの風
2019年1月2日 11:52
カチタスは不動産業界にあっては一口で言うと、「地味な会社」。創業(1978年)以来、そのビジネスモデルは一貫している。古家(中古住宅)を買い取り、リノベーションを施して再販する。
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具体的には、白アリの有無や雨漏り等々を徹底して調べた上で同様規模の住宅の新築価格の半分程度で買い取り(平均購入価格帯、約1300万円)、それを修復し第1次住宅取得層に対して売る。平均売却価格は約1600万円。現在、全国に100店舗余りの営業拠点を構え創業以来累計で4万戸以上を買い・販売している。ちなみにカチタスの社名の由来は、古家にリノベで「価値(カチ)タス」とか。
そんなビジネスを展開しているカチタスがいま、スポットライトを浴びようとしている。一つの理由は超低金利を背景に、購入層が毎月「家賃価格」並みの住宅ローンの返済額で十分にマイホームが持てる点。そしていま一点が、空き家問題。野村総研の試算によると、2018年の国内の空き家は約1076万戸。そして相続はしたものの放置される戸数が今後年間60万戸以上増え続けると、33年には空き家は約2146万戸に達し戸建て住宅総数の3割を占めるまでになるという。
古い戸建ての空き家は、地方に多いといわれる。頷ける。地方再生・地方活性化が求められているとはいえ、都市部で働く人が職を投げ打ち容易にUターンできるものではない。故郷(いなか)に親が残した古家を相続しても「買ってくれる人がいれば売りたい」と考えるのが大方ではないか。カチタスが取り扱う物件は圧倒的に地方が多い。「空き家問題にカチタスの存在感が高まっている」とされる理由である。
その当たりはカチタス側も十二分に意識している感が強い。今期中にも家具販売店チェーン大手「お値段以上」のニトリと共同仕入れ体制をとる点などに象徴的。「ニトリ同様の家具が備わった再生家」となれば、文字通り「カチタス」の証しとなり買い手の意欲をくすぐる事にもなる。
前期の「11.9%の増収、46.9%の営業増益、30.2%の最終増益」に続き今期も「11.9%の増収、15.4%の営業増益、16.4%の最終増益」計画で立ち上がり、既に開示済みの中間期は前年同期比「18.9%増収、29.9%営業増益、35.1%最終増益」と上方修正の可能性大。
カチタスにはいま、空き家問題というフォローの風が吹き始めている。(記事:千葉明・記事一覧を見る)