IWC脱退の是非は 自民党水産族議員の影響も?
2019年1月1日 14:51
IWC(国際捕鯨委員会)からの脱退は「是」なのか「非」なのか。個人的には「鯨肉」大好き人間の私には「商業捕鯨再開」は朗報なのだが、ことはそう単純なものではないようだ。昨年12月27日朝、朝日新聞電子版が「決定まで水面下でことが進められ、メリットも見えづらい。決定の裏にはある政治家の存在があった」といった導入文で「見解」を伝えた。本文を読み進まなくとも「政治家」が「誰」を指しているのかは容易に想像がついた。
昨年9月のIWC総会の議長は森下丈二氏(東京海洋大学教授)が務めた。約半世紀ぶりの日本人議長だった。「新春早々の日米新貿易交渉」「東京オリンピック・パラリンピック」への影響等を懸念する姿勢の外務省に、自民党の水産族議員は「日本人議長」を千載一遇のチャンスと捉えた。満を持して結果を待った。が、IWC総会の決論は「商業捕鯨ノー」。総会直後の10月、自民党本部で開かれた「商業捕鯨推進委員会」では浜田靖一氏(元防衛大臣)が外務省幹部に「(脱退を視野に入れた)工程表の提出」を求めた。「検討を深めている」とかわそうとする外務省側に「党をなめるな」と一喝した御仁がいた。捕鯨が盛んだった和歌山県選出の二階俊博幹事長だったと伝えられている。その通りなら「地元(選挙区)への利益供与第一主義」という政治家の意識は全く変わっていないようだ。
IWCの設立目的には「鯨類の適当な保存、及び捕鯨産業の秩序ある発展」といった内容が記されている。曖昧模糊と言わざるをえない。「捕鯨推進国」と「捕鯨反対国」の力関係によって方向が変わる可能性を孕んでいる。それが民主主義の原則に基づいた国際機関と言ってしまえばそれまでだが。7月の脱退が決まったいま口にしても致し方ない。が、「青臭い」かもしれないが「鯨食文化」を日本はより広範に発信すべきだったと思う。
現実問題として今後、日本は領海とEEZ(排他的経済水域)で商業捕鯨を展開する。だがIWCの加盟国だったが故に言葉を選ばずに言えば「調査捕鯨」という名目で(実質上の商業)捕鯨を行ってきた南極海での展開はストップする。果たしてその影響が(捕鯨量の上で)どう出るかは、脱退後の推移を見守らざるをえない。
ただ、政治的背景だけで決まった脱退は鯨肉大好き派にとっては「鯨肉の味を落としはしないか」という不安が残る。(記事:千葉明・記事一覧を見る)