連続29期増配必至の「花王」が見せた増税対策に感服
2018年12月30日 21:07
花王は10月24日に12月期決算の第3四半期を発表した。(決算短信の)通期配当予想の欄には「10円増配の120円配当」としっかり書き込まれていた。日本の上場企業の中で最長の、29期連続配当は99.99%間違いない。
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そんな花王が11月27日に、またまた大きなサプライズを発表した。それを受け同社の株価は26日の終値(8065円)に対し翌日27日には、5.25%高い水準(8489円)まで上昇している。サプライズの「程」がうかがえる。「ファインファイバー」と名付けられた人工皮膚。発表に臨んだ沢田道隆社長は「今回発表するのは、50以上の基礎研究中の選りすぐりだ」と、胸を張ったという。
そんな報に接した時、まず脳裏を走ったのは総務部で聞いた連続増配に係る話だった。「利益の配分には優先順位がある。まず先々を見据えた研究開発費、体力増強のための内部留保。そして配当」。今回優先順位1位の研究開発がサプライズを生み出したというわけだが、ファインファイバーとはこんな優れものとか。専用器具で直径0.5マイクロメートルの極細繊維を噴射し肌の表面に極薄膜をつくる。肌の凹凸や動きにも乱れず付着するため膜の上に化粧をしてもムラが生じにくく、自然にしみやしわを隠せる。あらゆるスキンケアやファンデーションに使える。12月13日付けの日本経済新聞電子版でJPモルガン証券の角田律子シニアアナリストは「ファインファイバー技術だけで(花王の)19年12月期に80億円の増収効果があろう」としている。
実はこのタイミングで「将来は治療分野にも応用する計画」(沢田社長)というファインファイバーを発表したのには、消費増税対策の意図が窺える。周知の通り19年10月1日に消費税は現行の8%から10%に引き上げられる。食品などと異なり花王が取り扱う商品は、軽減税率の対象にはならない方向で事は進められている。
前回の消費増税時(14年4月1日の5%から8%への引き上げ)に花王は煮え湯を飲んだ苦い体験がある。14年3月は駆け込み需要で前年同月比6割近い増収となった。が、4月には一転し2割方減収となった。14年12月期決算にも影を落とした。連続増配は継続も例えば営業利益は増益維持も、期初計画の1840億円に対し1333億円弱にとどまったのである。ファインファイバーの発表会見で沢田社長は、こうも語ったという。「増税後は消費がどんと落ちるが、わくわく感が感じられる商品なら買ってもらえる」。
29期連続増配企業の底力は中途半端ではない。(記事:千葉明・記事一覧を見る)