日産・可変圧縮比ターボ(VCT)・エンジン(3) ターボチャージャーとの兼ね合い

2018年12月21日 21:26

■ターボチャージャーとの兼ね合い

 出力を上げるためターボチャージャーにすることは大変効果があるものだ。この技術を開発したのはアメリカだった。初めは高空を飛ぶ飛行機のための技術だったのだ。「ターボラグ」が問題にならない飛行機にはうってつけの技術で、日本本土爆撃と広島、長崎に原爆を投下したボーイング・B29では実用化されていた。日本は技術開発に遅れ、ゼロ戦などはB29迎撃にほとんど役に立たない状態だった。

【前回は】日産・可変圧縮比ターボ(VCT)・エンジン(2) 「可変圧縮比ターボ(VCT)・エンジン」とは?

 この高空を飛ぶ飛行機のレシプロエンジンは、NAでは空気が薄く、大幅に出力が低下してしまうのだ。ターボチャージャーは、薄い空気でも大幅に取り入れることが可能で、十分な圧力とできたのだった。戦後、日本車でこの技術を採用し始めたのは日産だった。既に半世紀前となってしまったが、ブルーバードSSS(スリーエス)などの実用乗用車のスポーツバージョンに取り入れ、最高馬力を争ったのだ。

■ターボラグの問題

 しかし、乗用車で問題が発生した、その代表は「ターボラグ」だった。高回転エンジンが望まれる時代、立ち上がりの遅さは「実用にならない」と言われるほどで、特にレーシングカーではドライバーから嫌われたものだった。現代のCVTミッションよりも大きく取り上げられていた。さらに、エンジン専門家にとって悩みの種は、ターボチャージするには低圧縮エンジンとすることが必要なことだった。すると、低圧縮比の低回転エンジンにおいて、立ち上がりの低い回転数ではよけいにトルクがないため、ターボラグの感覚が強くなってしまうのだ。現代では、低回転領域では燃費が悪くなってしまうことが問題だ。熱効率の悪いエンジンを作り、ターボチャージでカバーするような状態となり、チャージが効かない領域での低圧縮が大きな問題となっているのだ。

■ノッキングとの闘い

 これは、高圧縮エンジンにすれば解決できるのだが、それは同時に高回転でのノッキングの発生を意味して、ターボチャージを低くしなければならず、熱効率を上げることが出来なかったのだ。そこで、圧縮比をエンジン負荷の大きな領域などではNAエンジンに近い状態で運転し、アクセルを踏み高負荷で出力が欲しい運転状態などでは、低圧縮比でターボチャージを十分かけた状態とすれば、高出力が得られ燃費が良いことになる。ノッキングを押さえ、燃費を良くして高出力とするには、「可変圧縮エンジン」は希望が持てる仕組みなのだ。

■2L・VCTエンジンは、3.5L・ NAエンジンよりトルク10%、燃費27%向上

 日産がアメリカで発表した、インフィニティQX50の可変圧縮比ターボ・エンジン「KR20DDET」は、圧縮比を8~14まで変えられる。1970cc(圧縮比14)から1997cc(圧縮比8)の間で増減できる。このことにより、3.5L・NA固定圧縮エンジンと比べて、2Lエンジンながら、トルクで10%、燃費で27%向上できた。さらに向上を目指して開発が続けられ、熱効率で50%を目指していくと言う。これは期待される技術であり、EVを必要としない技術となる可能性もあるのだ。果たして、日産内部の技術的方針の変化なのか、既定の方針なのか?(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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